第6話 In The Sky

 金魚は思った。確かに急いではいるが、『悠然と空を飛んで、皆に空からの景色を楽しんで貰おう』と。

 が、しかし、『…重い。』高校生の男女4人は想像よりも重かった。女子2人は小柄だが、男子2人は背が高く、スポーツが得意そうな締まった体つきをしている。

 金魚は体重と言うものを知らなければ、背の高さは重さと比例するという事も分からないし、ぜい肉より筋肉の方が重いという事も知らなかったのだ。

 なので今、金魚は高度もスピードも上げられず、よろよろと、空とも呼べない高さを泳いでいた。


「金魚クン、大丈夫?…ってか、急いでるんだよね…?」

 隼太が問いかける。自宅で親が…とは言え金魚を飼っている隼太は金魚に優しい。

「だよね、急いでるって言ってたよね…?」

 莉奈も聞く。

「は、はあ…。」

 金魚は焦って、しどろもどろに返事をする。

「何か手伝った方がいいんじゃない?」

 彩花は皆に、建設的に提案をした。

「で、したら…。」

 金魚は返事をしながら、自分たちのリーダーの言葉を思い出した。



『招待状を受け取った者達を連れて来るときにもしも不都合が生じたら、此所ここ、チャイルドフット アイランドの恩恵が受けられる様にしておきましょう…。』



「あ、あの、何と言いますか、それでしたら空気をいだり、空に浮かび上がれたり出来る物を想像して下さい!」

 妙に人間臭いところのある金魚は、このとき、『ヒレ』という言葉を度忘どわすれしてしまっていた。…なので本当は『ヒレ』が大きくなりさえすれば良かったのだが、回りくどい、余計な事を言ってしまったのだ。

 だが、そのことに後から気付いたのであった…。

「思い付いたら、私の合図で『ソレ』をより強く思い描いて下さい。……いいですか?いきますよ?…それでは、お願いします!」

 金魚がしゃり終わると、ぶわんっと金魚の体から湯気が出た。と同時に、金魚の体は湯気を振り切る様に、空へ向かって垂直に急上昇した。

 莉奈達は状況が飲み込めず、また、異形な姿になった金魚に驚き、それぞれ呟く。

「きゃあっ!」と、莉奈。

「…こういう事だったのか。」と、慎士。

「風圧、すごっ。」と、彩花。

「ってか、なんじゃこりゃあああっ!」と、隼太。

 金魚の口先では小さなプロペラが回り、腹ビレは左右に分かれた上にトンボの羽のような形になり羽ばたき、胸ヒレは白い大きな鳥の翼を広げ、尾ビレは……何故なぜかお祭り用の赤い大きなウチワだった。

「ありがとうございます!おかげで泳ぎやすくなりました!」

 プロペラ以外に自身の体に何が起きているのか気付いていない金魚は、大喜びであった。

「さあ、今度こそ行きましょう!チャイルドフット アイランドへ!」

 …ノリノリの金魚に対して、『これで良いのか?』と思う彩花達だった。

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