第4話もう一人の招待客
そのとき、背後で音がした。自分達の話に夢中で誰かが近付いて来ている事に、全く気付いていなかった。驚いて飛び上がってしまった。
「何?その反応。」
「彩花かよ!びびらせんなよぉ」
「隼太、失礼だろ。ごめん彩花。」
どうやら隼太と慎士、彩花と呼ばれた女の子は知り合いらしい。
「慎士が謝るの、変だと思うんだけど。…私、池に行きたいんだけど、どいてくれない?」
どうも思った事を全部出してしまうタイプらしい。正直ちょっと苦手だな、と思った。だが隼太は、気にならない様だった。
「ひょっとして、お前も封筒届いたのか?」
「ってことは、あんた達もあの変な招待状受け取ったの?」
4人は顔を見合わせる。そのときになって、彩花はやっと私の存在に気付いた。立ち位置が男子二人の影になっていたので、彩花からは今まで見えなかったみたい。辺りが暗くなって来たのも原因の1つではある。
「あ、初めまして、石田莉奈です。」
挨拶をすると、彩花は少しバツの悪そうな顔をしつつ挨拶を返してくれた。
「篠原彩花です。変なところを見せてごめんね。隼太とは幼馴染みなの。慎士とは中学からね。」
話を聞いたら先程のやり取りに納得した。確かに幼い頃からの友人なら、当然の受け答えでだろうな、と思った。
そのまま話をしていると、どうも同じ高校に通う同学年である事が分かってきた。クラスが違うから今まで知り合わなかったのだ。
「で、本題に戻るけど。石田さんも貰ったんだ、アレ。」
彩花に聞かれる。
「莉奈で良いですよ。…ええ、ちょっと怪しいですよね。」
「分かった。彩花って呼んで。敬語もやめよう。…でも、あの手紙、なんか気になるのよねぇ。」
「こら!女子。オレらを置いて行くな!」
後ろから隼太が大声を出した。私達女子二人は、話しながらどんどん池へ向かって歩いていたのだ。
「差出人がどんな奴かわからないんだ、俺達が前を歩いた方が良いだろう。」
隼太の愚痴に、慎士が真っ当な意見を
「で、池に着いたら女の子達には木陰に隠れて貰って、俺達が安全だと判断したら、彩花にラインを送る事にしよう。」
慎士の
「ふうん、別に私は何が起きたって構わないんだけど。」
彩花は不満そうだ。が、私の方にくるっと向き「アドレス交換しよう」、と言ってくれた。
そんなやり取りをしている間に、池を囲うフェンスの前に着いた。空はもう夜の色だ。
「もう少し左に行くと、出入口があるんだ。『立ち入り禁止』の看板はあるけど、良く見ると、『小中学生だけで池に行く事を禁ず』って書いてあるだけだからさ。」
隼太が得意気に言う。
「あんた、反抗期のときに、良くここに逃げ込んでたって言ってたわよね。」
彩花が
私は人見知りをするタイプなのだが、彩花と隼太と慎士の会話を聞いていると、以前からの知り合いの様な気分になっていた。
夜のせいかな?と思う。何となく、星空を見上げた。夜は人と人の距離を
「なんか、ワクワクして来ちゃった。」
私の言葉に、彩花がフフッと笑うのが見えた気がした。
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