29:デリケートゾーンの危機(2)

 学校の休み時間。

 

 ボンヤリとスマホを眺めていたら、

 

 「やっほー。タッちゃん、やってるかい?」

 「そんな下品な挨拶はやめろ……」

 

 明日香がやってきた。

 

 「ところで、さっきから何見てるの? 私にも見せてよ」

 

 と、平気でスマートフォンを覗き込んでくる。

 

 すると、明日香は飛びのいた。

 

 「え、え、え、え……!? いったい、な、なんて写真を見てるの、タッちゃん!?」

 「ユウの写真だけど」

 「そ、そうじゃなくって! ユウくん、大事なところ露出しちゃってるじゃないっ!?」

 

 あわわわ、と明日香の口元が震える。


 無理もない……。ユウがデザートを晒して、ポーズをとる――という、デンジャラスな写真を見てしまったのだから。

 

 「ふふふふっ……俺はついにやったぜ。どうだ、うらやましいだろ?」

 「ううううらやましいっ! うらやましいよぉっ……!」

 

 明日香は、よだれをたらさんばかりにしていたが、ついにスマホの画面に食いついた。

 

 「おい、スマホ食うやつがあるか、バカ!?」

 

 

 「――へぇ、そんなことがあったのね。あーぁ、ユウ君と一緒に住んでるなんて、ほんとに役得だよね。タッちゃん」

 「まあな」 


 俺は、この間のことを明日香に説明した。

 

 「でも、ほんとに病気とかなの? ユウ君」

 「いやぁ、ちょっとネットで調べたけど、ちょっとぶつぶつができるくらいよくあることらしいぜ? ヤリまくりでもないし、心配要らないと思うな」

 「そうなんだー、よかったね」

 

 明日香は、にっこりした。

 


 多分、病気ではないってことは分かったけど……実は、そのことをユウには教えていない。

 

 だって、教えちゃったらもう相談しに来てくれないかもしれないし……。

 

 ときどき、写真を撮らせてもらったり、デザートを「触診」させてもらう口実にしようと思う。相変わらず、俺の思考は鬼畜すぎるようだった。

 

 でも、写真を撮ったときのユウはすごかったなぁ。

 

 「隅々まで記録したいから」

 

 と、我ながらバカバカしい言い訳をでっち上げて、ユウのデザートを撮らせてもらったのだ。それもいろんなポーズで。

 

 布団に寝転がって、脚を広げてもらったり。

 

 四つんばいになってもらい、後ろから撮影したり。

 

 普通に立ちつつ、手で持ってよく見えるようにしてもらったり。

 

 俺のことを信じきったユウは、全く文句も言わなかった。ただ忠実に、恥ずかしい姿を晒してくれる。

 

 こんな感じで、あまりにも魅惑的すぎるユウの姿を、何枚も写真に収めたのだった。

 

   

 

 「――と、いうわけなんだけど」

 「へー……て、徹底してるね。あのさ、タッちゃんって、ひょっとしなくても変態さんなんじゃない?」

 

 明日香はドン引きして言った。

 

 「いやぁ……あれだけ可愛いと、たぶん男だったらみんな我慢できないと思うぞ。だから、しょうがないしょうがないっ!」

 「こ、このお兄ちゃん開き直ってる!?」

 

 ずざざざ、と明日香は数歩後退した。

 

 とはいえ、明日香だっておかしな所はあるので(主にユウに対して)、それはおあいこだと思うんだけど。 

 

 「ん~っ? そんな態度とってていいのかな、明日香」

 「え?」

 

 目を丸くする明日香に対し、俺はいやらしい手つきでスマホを振って見せた。

 

 「ユウのマル秘写真データ、欲しくないのか? あーぁ、明日香にもわけてやろうかなと思ってたのに……やっぱやめちゃぉっかなぁ?」

 「?!」

 

 ふっ、これは効いたかな?


 とたんに、明日香はびしっと頭を下げ、

 

 「お、お願いします竜也さまっ! 私にも、ユウ君のえっちぃ写真のお恵みを……!」

 

 百八十度、態度を変えていた。自分で脅しておいてなんだけど、現金なやつだな……。

 

 「う~ん、どうしよっかなぁ~~~?」

 「ね~、お願いおねがーいっ、竜也さまぁ……っ♪ 私にも写真くださぁ~いっ♡ あ、肩でも揉みましょうかぁ?」

 

 明日香は俺の背後に回りこみ、マッサージしはじめた。あーきもちいい……。

 

 「そうだなぁ……脚も揉んでくれたら考えてもいいかな?」

 「はいっ、はいっ、喜んで♪」

 

 今度はひざまずき、俺の腿をもみ始める明日香。うぅん、写真の効果はすごいな。

 

 それにしても。

 

 弟を騙して写真を撮り、今度はそれをダシにして、カノジョをいいように操るなんて……。

 

 俺って、こんなにエスっ気強かったのか……?反省はしない。

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