16:兄弟の結婚写真!?(2)

 

 

 「お、お父さん、これでいいのかな……?」

 「おぉ、そうそう。もうちょっと、ブーケを真ん中に――」

 

 なぜか、俺とユウとで写真を撮られていた。

 

 ユウは椅子に座り、ブーケを持つ。

 

 俺は横に立ち、ユウの肩に手を置く。


 さすがに、服装は制服のままだけど、これは――

 

 「な、なんか、結婚式の写真みたいだな……」

 

 と、俺はぼやいた。 

 

 カメラを色々調整しながら、父は、

 

 「いいじゃないか。竜也は、いつの間にか背が高くなってて、いい感じだぞ。優斗も……相変わらず……可愛いから、ブーケがものすごく似合ってるな」

 「ええええっ……そ、そぉかなぁ?」

  

 ユウは、複雑な表情をしている。

 

 「あぁ、メチャクチャ似あってるぞユウ……!」

 「お、お兄ちゃん、なんか目が怖いよ……?」 

 

 ユウは、少々引いていた。

 

 「でも、ボク男なのに、ブーケなんて……変じゃないかなぁ?」

 「何言ってるんだ! 俺がそれ持つより、お前が持ったほうが一兆倍は似合うだろ!」

 

 ユウの両肩を掴み、がくがくと揺さぶる。

 

 「だ、だから怖いってお兄ちゃん! ……で、でも。それは……そうかもしれない……ね」

 

 ユウは、蚊の鳴くような声で言った。恥ずかしいらしく、下を向いてしまう。

  

 「よーし、二人とも撮るぞ。3、2、1……はいっ」

 

 パシャリ、と音がして、フラッシュが焚かれた。

 

 さすが本職だけあって、親父は幾度か写真をキッチリ撮り直した。

 

 そして――

 

 「おぉっ……これは……!?」

 

 写真のできばえに、俺は嘆息した。

 

 自分の映りはほとんどどうでもいいが、注目すべきはユウだ。

 

 肩に俺の手が触れて、顔をピンク色に染めているのが、写真でも分かる。

 

 「この恥ずかしそうな笑顔……メチャクチャいいじゃん、ユウ!」

 「えぇ!? そ、そんなぁ……❤」

 

 ユウは、いまだ熱そうな頬に手を当てて、体をくねくねさせた。

 

 「なんだよ、けっきょく嬉しそうじゃないかよ」

 「そ、そんなこと……ないよ……っ❤」

 「いやいやっ……。父さんだって、これ良いと思うだろ?」

 

 父は、写真のデータを眺めた。真剣な表情で、あごをさすっている。

 

 「うぅむ……これは、拡大して店の前に貼り出しときたいくらい良い出来だな」

 「そっ、そんなぁっ、お父さんまでぇっ……❤」

 「はははははっ、冗談だ冗談!」

 

 

 ――ところが、冗談でもなかったらしい。

 

 翌日の朝。

 

 店のウインドウには、肩に手を置かれて艶やかに微笑むユウの姿が、超拡大されて貼り付けられていた。

 

 「入学記念写真・結婚記念写真もどうぞ!」

 

 というキャッチコピーつきで。

 

 「うわあああぁぁぁぁんっ、お父さんったらぁ~~~っ……!」

 「ぜんぶ、お前が可愛いから悪いんだ。諦めろ、ユウ」

 

 写真のポーズと同じく、俺はユウの肩にぽんと手を置いて慰めた。

 

 

 ――というのが、今回のオチなわけだが。

 

 その日から、店の前にやたらと人が立ち止まったりうろうろするのが、目に付くようになった。

 

 どうも、ユウ(と、いちおう俺)の写真に目を惹かれてしまってるようだ。

 

 店の売り上げも、それにともなって大幅アップ……それどころか二倍になった! ――というのが、今回の二段目のオチだった。

 

 「うん、やっぱり優斗の写真飾ってよかったな! さすが優斗、何回もスカウトされてるだけのことはある!」

 「もぉっ……お父さぁんたらぁっ!」

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