14:禁断の3P?(2)

 「……こんなとこで脱がして、誰かに見られねぇかな?」

 「大丈夫でしょ。まぁ多少は見られちゃってもね?」

 「多少でも、見られたらまずいだろ!」


 口を動かしながらも、俺達は手を動かすのを止めない。

 

 ユウのワイシャツを脱がすと、下着のシャツがあらわになる。明日香は、ユウの腕を上げさせた。

 

 「わぁっ……♡ これがユウ君の腋の下?! カッワイイ~~~~っ……❤」

 「俺もそう思うわ」

 

 剃ったばかりで、ツルッツルになっているユウの腋の下。

 

 明日香は鼻息を荒くして、その敏感な所を、つつつっとなぞった。すると……


 「ふぁ、ぁンっ……んんぅっ……❤」

 

 ユウは、気持ちいいのかくすぐったいのか、無意識のうちに大口を開けている。

 

 「ああぁぁっ……やばいよっ、ユウ君すごい可愛いよ……!」

 「とうぜんだな。ユウは俺の自慢の弟だし」

 

 俺と明日香は、二人でユウの腋の下をこする。

 

 つつつっ……。

 

 「ンぅ、ふぅぅぅっ……❤」

 

 スルスルスル……。

 

 「はぁーっ……ンっ、ん、はァんっ……❤」

 

 眠ったまま、ユウは色っぽい寝息をたてまくる。

 

 こ、これは……!?

 

 あまりにも過激な声に、俺も明日香も、いつしか無言になっていた。夢中になって、せっせと腋の下をこすり、ユウを鳴かせようとする。

 

 つるつる、つるつる。しゅっ、しゅっ……。

 

 「ふぁっ、はぁぁぁっ……んっ、ふァぁ……❤」

 

 面白いように、官能的な声をあげるユウ。

  

 「……おい明日香。お前、顔真っ赤だよ」

 「……えっ!?」

 

 明日香は、ぱっと自分の頬を覆った。

 

 さっきから、くすぐったがるユウを、口を開けて凝視していたのだ。

 

 「うぅっ……。でも、タッちゃんだって真っ赤じゃん!」

 「知ってる」

 「こ、このお兄さん、開き直ってる……?! まぁユウ君可愛いし、気持ちは分かるけどぉ……っ♪」


 明日香は、目をトロンとさせて、ユウのあごをつかんだ。

 

 が、ふと、俺のほうをニヤニヤして眺めてくる。

 

 「あ、もしかしてさぁ。私がこんなこと言ったら、タッちゃん嫉妬しちゃう?」

 「別に」

 

 俺は即答した。

 

 「ひ、ひどっ!? 私なんてどうでもいいってコト!?」

 「そうじゃないけど……。もう、ユウに嫉妬するなんて、ミューズに嫉妬するようなもんで、バカらしいしな」

 「そ、そこまで!?」

 

 美の女神並みに美しいユウの顔を、明日香はくるっと自分のほうに向けた。

 

 ちょっとくちびるを突き出し――

 

 「じゃーあー、私がユウ君にチューしちゃっても、特に問題なしってことだよねぇ♡ じゃあっ……ん~~~~っ……」

 「!? そ、それはダメだ!」

 

 がばっ!

 

 俺は、ユウの顔を俺のほうに向けて、キスを防ぐ。

 

 「えぇっ、なんで!?」

 「口にキスなんて、まだ俺だってしてないんだぞ!? 他人に先に奪われてたまるか!」

 「他人じゃないよ! 幼馴染でしょ?!」

 「俺とユウ以外は、全員他人なんだよ!」

 

 俺は、唾を飛ばしそうな勢いで熱弁する。

 

 「ええええ~っ……?」

 

 明日香は、げんなりとした表情になる。

 

 「分かったよ、もう……。で、でも、私だって、ユウ君にチューしてあげたいのになぁー」

 

 明日香は流し目で言った。

 

 「はじめてじゃなければ、してもいいんでしょ?」

 「……まぁ、いいかな」

 

 ユウは可愛すぎるし。

 

 この先、俺一人が独占しておくというのもムリだろうな……。

 

 「じゃあさ、いま、さっさと初チュー済ませちゃってよ」

 「……え?」

 

 凄いことを言われ、俺はビビった。

 

 「ほら、私もユウ君にチューしたいんだから。さ、お兄ちゃん早く早く!」

 

 明日香は、パンパンと手を叩いて煽ってくる。

 

 口にキスとか、さすがにそれはまずいだろ……? ためらっていると、

 

 「ほらぁ、しないなら私が奪っちゃおうかなっ?」

 「すぅ……すぅっ……」

 

 寝息を立てるユウの顔を、明日香はねっとりさすった。

 

 「く、くそっ……分かったよ! すればいいんだろ、すれば……っ!」

 

 俺は、ユウの寝顔に顔を近づけた。ちょっとだけ開いた小さなくちびるが、迫ってくる……。

 

 正直、覚悟はできてないんだけど。でも、他のやつにとられるよりは……!

 

 「すぅ、すぅ……」

 「ユウ……!」

 

 今にも、くちびるが重なりそうだ。

 

 「キャーっ、すごっ! ちょっと写メとっていい?」

 

 と、携帯を構える明日香。

 

 しかし、その瞬間――

 

 どこからか、野球ボールが飛んできた。ユウの足の辺りに、見事命中する。

 

 「ひゃっ!? ん、んん~~っ……?」

 

 ユウが目を覚ましかける。

 

 と同時に、「ボールどこ行ったかなー?」などとしゃべる生徒の群れが、どんどんこちらに近づいてきた――

 

 (うぉぉっ……や、やばいっ! 明日香、証拠隠滅、証拠隠滅!)

 (お、おっけー!)

 

 急いでユウの制服を整え、ボールを投げ返してやる。

 

 しかし、そこで完全にユウは目覚めてしまい……けっきょく、

 

 「お兄ちゃん、明日香さん、また放課後にっ♡」

 「お、おう、じゃあな」

 「……またね、ユウ君」 

 

 と、俺たちはダウナー気味にあいさつする。


 昼休みは、終わってしまったのだった。

 

 「中途半端なとこで、終わっちゃったね。ま、また次の機会もあるよっ」

 「……そうだな」

 

 残念は残念なんだけど。

 

 どことなく、ほっとしている俺もいたのだった。

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