10:弟のわきのした処理

 「ねぇ、お兄ちゃん……」

 「ん?」

 

 夜中。

 

 店の片付けも終わり、特にすることもなくなった時間帯だった。

 

 両親と居間でテレビを見ていると、急に、ユウが声をかけてきた。

 

 「何か用か?」

 「……ちょっと」

 

 と、ユウは赤らめた顔をドアの端から覗かせていた。

 

 どうも、両親の前ではしたくない話らしい。

 

 その可愛らしい表情にパンツを濡らしながら、俺は平静を装って居間を出た。

 

 ユウは、やっぱり聞かれるのが怖いのか、居間のほうをちらちら気にしている。

 

 「ユウ……俺の部屋に行こう」

 

 これはチャンスだ。

 

 という気がして、精一杯のイケボで言った。

 

 ……ちょっと、気持ち悪かったかな?

 

 「え? う、うん……そうだね」

 

 おろおろしたユウの背中を押し、俺の部屋にまで連れてきた。椅子に座らせる。


 お持ち帰り性交……じゃなく、成功である。

  

 「で、何だ?」

 「あの……」

 

 ユウは軽くこぶしを作ってあごに当てながら、所在なげに床を見つめている。

 

 こいつ誘ってんのか?

 

 と、考えてしまうくらい可愛い仕草だった。

 

 たぶん、本人にはそんな意識はちっともないだろうけど。

 

 「……お、お兄ちゃんって、お髭そってるよね」

 「え? あぁ、まぁな」

 

 俺はうなずく。

 

 確かに、たまにかみそりで剃っていた。

 

 「それがどうかしたか?」

 「あの……ボクも生えてきて……。それで、どうしたらいいか、分からない……ん、だけど……」

 

 と、ユウは消え入るような声で言った。

 

 「えぇっ、お前にひげ!? そんな、男じゃあるまいし、ひげなんか生えるかよっ」

 「ボクは男だよっ、お兄ちゃん?!」

 

 ユウは、必死に俺の胸をぽかぽか叩いた。

 

 「ひげじゃないんだけど……腋の下に、ちょっと、生えてて……。体育の時とか、見えちゃわないかなって、恥ずかしい……んだけど」

 「はぁ、なるほど。じゃ見してみ」

 

 「見してみ」と言っておいて、俺は自分からユウのパジャマを脱がせた。

 

 上半身がシャツ一枚になり、ユウの腋の下があらわになる。

 

 鼻先を近づけてしげしげ観察した。

  

 ほっそりした二の腕とわき腹。

 そして、その間に位置する、絶妙な深度のくぼみ。

 

 ……あぁ!

 

 あまりの神々しさに、その場でゴルゴタの丘に身を投げ出し、殉教したくなる衝動に襲われる。

 

 「……ん~、まぁ少し生えてるな」

 「でしょ。どうしよう、剃ったほうがいいのかな? お兄ちゃん……」

 

 俺に腋毛を見られて恥ずかしいのか、ユウは顔が真っ赤だ。 

 

 「そうだな……俺も生えてるけど、別に気にしてないよ。どうしても恥ずかしいのか?」

 「……うん」

 

 ユウは、その真っ赤な顔を縦に振った。

 

 「じゃあ、剃ったらいいんじゃないか」

 「うん。でも、どうやってやったらいいかわからなくて」

 「そうか……」

 

 俺は、かみそりを取り出した。

 

 「じゃあユウ。服を脱げ」

 「……へっ?」

 

 

 本当は、鏡のある洗面所とかでやったほうがいいのかもしれないけど。

 

 半裸のユウと戯れている姿を両親には見せたくなく、そのまま俺の部屋で続行する。

 

 「じゃあまず、手本を見せるからな。こうやって――」

 

 ユウの腕を上げさせ、腋の下をくぱぁっ……と開かせる。

 

 な、なんてエロいんだ、この穴は……正直、思いっきりこちょこちょして弄びたい。

 

 とはいえ、刃物を持ってるときにそれは危ない。仕方なく普通に剃ることにした。

 

 「かみそりとか、使ったことないだろ?」

 「うん……」

 「じゃ、まず剃る前にクリームとかを塗るんだ。肌を湿らせとかないと、傷つくからな」

 「そうなんだ……❤ お兄ちゃん、詳しいねっ♡」

 

 ユウはきらきらした目をこっちに向けた。兄を信頼しきっているらしい。あぁ、罪悪感が……!

 

 「じゃ、塗るから」

 「うん」

 

 クリームを人差し指と中指ですくい、ユウの腋の下に刷り込む。

 

 「ふぁ、ぁぁぁっ……!?❤」

 

 ユウは体をピクンと跳ねさせ、悩ましげな声をあげた。腋の下が後退して、俺の指から離れてしまう。

 

 「お、おい……何エロい声出してんだよ」 

 「え、えええ、えろ……くなんてっ……!」

 

 ユウは、耳まで真っ赤にした。

 

 どうやら、「エロい」というワードさえ、ユウは口にできないらしい。ウブなやつ。

 

 「とにかく、そんなに体をくねらせちゃ、できないだろ。じっとしててくれ」

 

 手を緩めず、クリームを塗りこんでいく。

 

 「はぅっ、ぅゥんっ……❤ やだっ、お兄ちゃ……ぁ、ぁンっ……❤」

 

 どうやら(くすぐったさを)感じやすい体質らしく、ユウは恍惚としている。

 

 「まだまだ、もうちょっとガマンな。ほら、こうやって剃るんだ。よく見とけ」

 「う、うん……」

 

 じょりっ……じょりっ……

 

 「んんっ……ぁっ……❤ お兄ちゃん、くすぐったいよぉ……っ❤」

 

 産毛に近いユウの腋毛を、ゆっくりと剃っていく。

 

 綺麗な肌を傷つけでもしたら、大変だ。

 

 それにしても。

 

 こんな敏感な所に、触れさせてくれてる――そのくらい気を許されてるのだと思うと、なんだか気分がよかった。

 

 よーし! お兄ちゃん、ユウを何でも言うことを聞くオモチャに仕立て上げちゃうぞー☆

 

 鬼畜じみた決意と共に、刃先をシュッと滑らせた。

 

 「ン、くぁ、ぁ……お兄ちゃぁんっ❤ ぁ、ぁ、アっ……❤」


 

 ユウの嬌声にムラムラしつつも、けっきょく、どうにか剃り終えた。クリームをタオルでふき取ると、よりキレイになったユウの腋の下が。

 

 ツルツルてかてかしている。うぅん、ますますやらしい……。

 

 「はぁぁっ……ありがとう、お兄ちゃん……❤」

 

 と、ユウは息を荒げて言ったが、

 

 「……いや、まだだ」

 「え?」

 「もう片方の脇が、まだ残ってるじゃないか!」

 「あっ、そうだった……!」

 

 

 「ふぁっ、やっ、そんなに剃っちゃったらぁっ……ンぁっ、やぁぁぁぁ~~~~っ……❤」


 ――もう片方の腋を剃られる、弟の甘い叫び声は、家中に響き渡ったのだった。

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