#2

いやおかしい!こんなことはあるはずがない。

だって異世界転生ってあれだろう!?基本はなんか死んだりして来るものだろう!?

ほらだって、今巷で流行りのこの○ばだって転○ラだって、死んでからくるだろ!?

い、いや、たしかゼ○の使い魔とかは召喚だったっけ......?

いやいやいや、かといってあれはフィクションだし!これは現実だろう!?

......まぎれもない、そう、"現実"だろうに。夢だったらいいのに、そう思いながら拳を強く握った。爪が手のひらに食い込む。痛い。

やっぱり夢じゃないんだ。これは"現実"。けれど......自分の嫌いな"現実"じゃなさそうだ。

それならいい。"あの現実"じゃないなら。ならばここで一から生きなおしてみるのはどうだろう。きっとそれがいい。よし、決めたもう決めた今決めた!

今から自分は、"あの"自分じゃない。


「ちょっと、さっきから何一人で百面相してるの、気持ち悪いよ」


ごちゃごちゃになっていた脳内をやっと整理し終わったと思ったら、この言いぐさ。

失礼なやつだ......と思ったけど、さっきから彼女の質問に答えていないのは自分の方であった。

少し不服に思いながらも謝ることにする。


「すいません......で、あの、なんでしたっけ」

「だから、魔法使いなんでしょって。あれでしょう?あなたも学院に入るんでしょ?」


はて、学院とは。

魔法使いだから、ということは魔法を学ぶところなんだろうか。

頭にはてなを浮かべていると、彼女はまた訝しげに問い詰める。


「ちょっと、もしかして学院を知らないの?」


怪しく思っているのだろう。じっとこちらを見つめる瞳は細い。

......仕方ない、これでは彼女を怒らせるばかりだ。ここは正直に言おう。

ただ、本当のことは信じてもらえないだろうし、異世界転生どーのは黙っておくけれど。


「うん、えっと、自分、ど田舎にいたもんで......世間知らずなんだ、よかったらその学院?について教えてくれないかなー......なんて」


ひきつった笑いを浮かべながら、言う。少し苦しいだろうか。彼女はまだ納得のいかなさそうな顔だ。


「ここより田舎なところなんて......まぁいいわ。それにしてもとんだ世間知らずなんだね。

 学院のことを知らないってことは、魔王のことも知らないわけ?」


呆れた顔で自分を見る彼女に、申し訳なく思いながら頷く。

溜め息をついてから、彼女はさらに続ける。


「そうねぇ、まずは魔王のことかな。いつだったかな......確か五年前くらいかしら。この世界の最果てって呼ばれるアムネア大陸にあった王国が一夜にして滅んだの。」

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