#1
はっと目を覚ますと、見たことのない天井だった。
嫌な夢だった。今さら思い出すなんてどうかしている。
のそりと体を起こすと、樹木と石と獣の混じりあった慣れない臭いが鼻につく。
「ここは......」
自宅じゃない、な。きょろきょろと辺りを見渡す。
木造りで、質素なベッドと机があるだけの、RPGによくあるような部屋だった。
コンコン
ノックの音がすると思ったら、ドアが開いた。
可愛らしい少女が、水桶をもって部屋に入ってくる。
「あ、もう起きたんだね」
体の調子はどうだと続ける彼女。
さらさらと流れる夜空色の髪に窓から溢れる太陽をうつした金色の瞳。姿勢がよいからか凛々しく見えるが、細く華奢な体。
ぼーっと見とれている僕を不審に思ったのか、訝しげに顔を覗きこまれる。
「ねえ、聞いてる?」
「え......あぁ、すいません、」
全然聞いてなかった。正直にそう伝えれば彼女は不機嫌そうに言った。
「あなた、魔法使いなんでしょう?」
え、魔法使い?
どういうことだろうか。否確かに、自分は黒魔術マニアだが。
ただ現実にはそんなものなどあるわけもなく、あれはいわゆる自分の現実逃避であるのだ。
......ちょっと待ってくれ。
今日のことを思い出してみる。
たしか、いつもとは違う黒魔術をした。呪文を間違えて言ったあと、おそらく意識を失った。そして目覚めれば見覚えのないRPGのような部屋。
現実にはありえない髪色に、コスプレのような服を着た少女。魔法使いに間違われる。
......まさか、まさかとは思うが、まさかなのだろうか。
自分は、異世界に来てしまった、のか?
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