GodLv-005 初めての夜、妃との一夜…違う、違うんだああああああぁっっ!!

《注意:今回は朝チュン前有りです。◆で区切っていますので苦手な方は飛ばしてください》


―――――――――――――――――――――――――


「ミナリ様、村に着きましたよ」

「……んっ? ああ、すいません。ぼうっとしてました」


 二つ目の混沌結晶を回収してから帰路につくこと2時間足らず。行きの時間と林の中で過ごした時間を重ねることで大草原の地平線には日が落ちていく様を眺める事が出来ていた。

 日本では早々お目にかかれない絶景に心を奪われていた私は、気遣いげに揺すられた肩に我を取り戻した。


「丁度良い時間になりましたね。このまま宿に戻って夕食にしましょうか」

「ようございますね。こんな辺境では夜まで開いている店などございませんでしょうし、夜はゆくっりと……ふふ」


 何だかユカリさんが御機嫌だ。昼御飯が質素だったし夕食を楽しみにしているのだろうか?

 かく言う私もあれほどの惨状を生み出したり、何時までも続く異常な現状に気疲れはしているが、腹はぐーぐーと鳴る一歩手前だ。まだまだ若い証拠である。24歳と実際に若いのだけど。

 村の入り口前では交代していた門番が黒青号の厳つさに驚き、再び槍を突きつけられると言うゴタゴタはあったけれど、それ以外は何事もなく宿につく。

 しかしこの村は人が少ないな。顔を合わせたのは門番二人x2と宿の老女将だけだ。

 遠目では畑や家畜の世話をする村人をチラホラ見かけるが、規模的に考えればこのあまりにも人が少なすぎる。

 黒青号と厩の横で別れ宿の中へと入ると、老女将がゴマをする様な手つきで出迎えてきた。


「お戻りで。夕食の御用意はできておりますが、いかがなさいましょう」

「すぐにいただきます。ユカリさんもそれで良いですか?」

「はい、ご随意に」

「へへえ、すぐに御用意したします!」


 いや、だから。なんで私とユカリさんと態度が違うのかな? 威厳の差は認めるけれど。


「ああ、お婆さん。村で人をあまり見かけないですが、何時もこんな感じで?」


 畏まって奥に引っ込もうとする老女将を呼び止め尋ねると、キョトンとした顔で振り向いた。


「何時もも何も、今はどの村や街でも最低限の者しかおりませんよ。戦える男衆や身の回りの世話をする女は皆(みな)、最後の大歪みを封じるための連合へと出兵しておりますので」


 ……む。初めて聞く話だ。四徳さんたちに聞いた話とを合わせると、今正に物語のクライマックスと言ったところか。

 しかしこれをしつこく聞いては不審がられるだろう。この世界の者にとっては当たり前であり、大事な事のようだから。

 老女将に礼を告げて送り出し、昼食を取った食堂へと移動する。ほどなくして出て来た夕食は意外と言えば失礼になるが、日本の民宿レベルは十分にある内容だった。

 少々のサイコロステーキにホワイトシチュー。新鮮な生野菜に朝と同じ黒パン。どうやら家畜も農作物も地球とそれほど変わらないようなので安心して食べられる。

 私は食に関しては冒険しない性質なので、怪しげなファンタジー食材でなくてホッとしている。

 味も調味料をケチったりもしておらず実に美味しい。この世界では塩胡椒長者になれそうにないな。


 それにしても、先ほどの話が理由からかどうやら宿には私たち以外の客はいないようだ。

 ユカリさんとゆっくりと夕食を堪能したが、誰も食堂には訪れなかった。

 しかし残念なのは風呂だ。この村には個人宅や宿に風呂は無く、公衆の浴場があるそうなのだが。今は人手が足りないと三日に一度しか湯を入れないらしい。

 今日はその日では無いと体を拭う水が入った桶と手拭いだけ貰って部屋に戻る。

 ああもちろんユカリさんには先に部屋で体を拭いてもらい、それから交代して体を拭った。

 ユカリさんは私の背中を拭うと言っていたが、それは勘弁して欲しいと言うとアッサリ引き下がった。ちょっと残念に思ったのは男としてしょうがないと思います。


「ああ、それにしても疲れた。寝るには早すぎる時間だけど、今日はもう寝てしまおう」


 本当なら帰ってからユカリさんとは別部屋にしてもらうつもりだったけど、もう疲れすぎてどうでもよくなった。

 別に何があるわけでもないし、良いよね?


 ――この時の私は浅はかにもそう思ってしまった。ここまで先送りにしていた問題のツケを払う事になるとは知らず。



    ◆



 ……うぅん。なんか重たい……柔らかい……温かい……良い匂いがするぅ。


「はぁ…あぁ…ミナリ様ぁ……」


 むにゃ? なんかユカリさんの声がする。にゅふふ、出合ったばかりのユカリさんが夢に出て来るとか、どんだけだよ自分……。


「ミナリ様…ミナリ様ぁ……」


 柔らかく重たいナニかがお腹の上と言うか股間の辺りで蠢いている。なんか気持ちいい。

 ウネウネ、スリスリ、モゾモゾ……あふん、だめぇ。


「ミ・ナ・リ・さ・まぁ。起きて下さいましぃ」

「んがっ?!」


 カプリと何かが耳に齧り付いた感触に慌てて起き上が……ろうとして失敗する。

 何かが下腹部の辺りに乗っていて上手く起き上がれなかったからだ。

 寝起きの霞んだ視界と薄暗い室内のせいで自分の体に乗っかっているモノを視認できない私は、慌てるに任せて手でどかそうとする。

 ――むにゅん


「あぁっ!? ミナリ様ぁ!」

「うひゃっ?! ご、ごめんなさい!?」


 柔らかかった! なんか知らんけどやあらかかった!!

 あ、でもこの声、ユカリさん?

 なんか失礼したらしい両手を万歳して遠ざける格好で目を瞬かせると、丸テーブルの上で煌々と輝くランプの光に照らされたユカリさんを確認できた。

 でも、なぜか、ユカリさんは寝ている私の腰の辺りにまたがっていた。乱れた格好で。


What's ワッツ?」


 いかん、驚きすぎて英語が出た。いや、え? なに? なになに? どういうこと??

 驚き固まる私の前でユカリさんが怪しく蠢く。


「あ、あの、ユカリさん、ナニをしてますカ?」

「何をと問われますと、夜伽の準備でございます。……ふふ」


 ユカリさんの薄い唇が開き、そこから出て来た赤い舌がペロリと唇を舐めた。唾液がついた唇がランプの灯りを反射して艶めかしく光る。


「はぁっ!? よ、夜伽ってそんなの駄目ですよ! こ、こういうのは良くないと思います!」

「良く無いとは一体どうしてでしょうか? わたくしはミナリ様の妃。夜伽はあってしてやって当然の事。極自然、そう、天然自然の理でございます」

「だだからっ、その妃って言うのもおかしいですってば! あ、会ったばかりなんですよ! 私た、ちぃっ!?」


 私の言葉を遮るようにユカリさんの嫋やかな指が私の胸を這う。って、何時の間に脱がされてたの!?  ワイシャツを着たまま寝てたのに、ボタンが全部外れてる!

 うわあああ! ちょ、止めて、感じちゃうぅぅ?!


「時間は関係ございません。わたくしはミナリ様、貴方様の願望によって形作られたのですから。そう、こうしてわたくしが夜這うのもまた、ミナリ様が望まれた事でございますれば」

「えっ、どういう事ですか!」

「わたくしはミナリ様の女性に対する願望を反映して生まれた存在です。この黒い髪も、嫋やかなのに豊潤な体も、男性を立てるのに決して言いなりにならない心強さも、全てがミナリ様が心の奥底から求められたこと」


 それって理想の女の子そのままって事!? 確かにユカリさんはド直球と言うか、見るも眩し過ぎる女性だけど!


「でもっ、だったら余計に駄目ですよ! そ、そんなのユカリさんに失礼じゃないですか! こんな事をしている意志だって私が思うままって事なんでしょう!?」

「……うふふ、そうでございますよ。ですがそれだけでもございません。産まれはそうだとしても、今となってはわたくしが求めての事です。ミナリ様ぁ……ん」

「んっ?!」


 覆いかぶさって来たユカリさんの唇が私の唇と重なる。そしてすぐにヌルリと熱いナニかが私の口の中に入ってきた。


「ん、ちゅ」

「ん、ぁあ」


 だ、駄目、駄目だ。コレは駄目だ。口の中を這い回るナニか、ユカリさんの下が私のなけなしの意志を蕩かす。密着した事でユカリさんのかぐわしい匂いが私の鼻と肺を満たす。

 っつあああああ! 漢っ気ー!!

 そのままなし崩しに“して”しまいそうになるのを漢気を振り絞って堪え、ユカリさんの肩を掴んで押し返す。


「んぁっぁぁん」

「ぷはっ!」


 タラリ、離れた唇と唇の間に唾液が一筋垂れる。

 ふんぎゃあああ!? エロいエロいエロいよおおおおお?!

 つーかファーストキッスだったんだけどおおおお!?

 心臓がもう爆発しそうだ!


「はぁーはぁーはぁー。だ、駄目、ですよ、ユカリさん。こういうのは、きっと、良くない」

「もう、煮え切らないお方ですね。ほら、コレを好きにしても良いのですよ?」


 ユカリさんはそう言って肩を掴んでいた私の手を取って自分の胸に引き寄せた。

 乱れていた着物のえりから中へと入れ、直に。

 ――Oh My Goddessああ、女神様……


「んんぁあっ! ミナリ様ぁ!」


 アカンアカンアカンアカンってぇええ! オッパイが柔らかくってパイオツ柔らかデカくってオッパイでええええ!!

 もうオラぁ、オッパイオッパイ…いやイッパイイッパイだよ!!

 耐えろ! 男一匹、斎藤さいとう三徳みなりぃ!!

 条件反射の成せる業か、知らず内に揉みしだいていた両手を渾身の思いで引きはがす。

 そのさいに着物が肌蹴てオッパイがオッパイがポロンとオッパロン……ばぶぅ。


「だめ、駄目です。ユカリさん。こ、こういうのはもっとお互い良く知ってから、です。そ、それに、恥ずかしながら私はこういう事したこと無いですし……ほ、ほら、ちゃんとお風呂にも入って無いですしね?」


 この状況に及んで言い訳をかまして逃げ出そうとする自分を心底情けなくも思うが、それでも自分の心に残った良心や常識を捨てきれない。伊達に24歳まで女性と手を繋いだ事も無い童貞ではないのだ。ヤリ〇ンではないのだ。


「んもう。お風呂なんてわたくしには必要ありません。わたくしは永遠の乙女。成長もしなければ老廃物も出ませんので埃さえ取れば何時でも清潔です。それにミナリ様の事は良く知ってますよ、もう言いましたけどミナリ様の願望、知識を元に生まれたのがわたくしなのですから」


 なにそれ!? 女の子はおトイレなんて行きませんってか! ちょっと本気で自分の事が恥ずかしくなってきたよ! アイドル=枕営業ビッチが定説の御時勢でなに乙女を夢見てんだ自分ー!!


「ふう、こんなに“下のミナリ様”は喜んで下さってますのに、もう一押しが必要なのですね」

「あふんっ?! グリグリしないでぇ……」


 体を蠢かせるユカリさんに情けない声を出してしまう。だって体は正直なんですもの。

 くやしい…でも感じちゃう! 女の子のお尻ってどうしてこんなに柔らかいの? お尻もオッパイだよぅ。

 しかし何度も抵抗する私にそろそろ辟易してきたのか、ユカリさんが可愛らしく唇を尖らせた。

 ああ、あの美しい唇にキスをしたんだな……はっ?! いかん正気を保て自分ー!!


「どうやらミナリ様は“この体と性格”ではご不満な様子。ならばもう一つの御嗜好に沿いましょう」

「へっ?」


 ユカリさんの体が見る見る内に縮まっていく。頭が低くなり手足が短くなり、肌蹴ていた丁度良い大きさの胸がペタンと平らになる。


「クフフ、こう言うのが好きなんじゃろ、お前様。ほれ、わしのまっ平らな胸にむしゃぶりついても良いのじゃぞ」

「うわ。うわああああっ!? ち、違うっ! 違う違う違うぅ! 誤解、誤解だってえぇ!!」


 小さくなったユカリさん、どう見ても“ギリギリ一桁”なユカリさんが私の頭を平らな胸に引き寄せて抱きしめる。

 いやちょっ、口を尖らせたらもうおぎゃあおぎゃあ!?


「クハハッ! く、くすぐったいぞお前様! ほんに仕方がないのう。これでも自分から手を出さんか。わしのような幼子に無理やり犯されたいとは、ほんにほんに業が深い。ほれ、“下のお前様”がさっきよりも猛っておるぞ」

「違う、違うんだああああああぁっっ!!」

「クフフッ、童貞、童貞! ほれ、わしの処女をくれてやるわっ! 童貞! 天井の染みでも数えておれ童貞!」


 ――っあ……

 その夜。私は大人になった。大きくなったり小さくなったりするユカリさんと何度も何度も。

 でもこれだけは信じてほしい。本当に、違うんだ。違うんだ……あふん。

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