第18話 討伐後処理です!
「……では、この古文書はアテナ教とは関係ない物という事ですか?」
「多分な。だが、古文書として価値がある事には変わりない。出来るなら大切に保管してもらいたいと思う」
「……そうですか。新たな教義が発見されるかと思っていましたが仕方ありませんね。古文書の方は今まで通り保管させていただきますのでご安心を。また御用がおありでしたら足をお運びください」
「そうさせてもらう。今日はありがとう」
俺はキーラと別れを告げ、神殿を後にした。
古文書について根掘り葉掘り聞かれたが、言えない事も含まれているため、答えられる範囲で答えておいた。
アテナ教にあまり関係がないと知った時には落胆しているようだったが、古文書が読み解けただけでも十分だとキーラは言ってくれている。
アテナ教信徒としては残念な結果だったが、変わる事のない信仰が出来ると考えれば±0だろうと思う。
とはいえ俺達にとっては大きな収穫だった。
謎も多いが、これを解いていけばいつかは世界の秘密に繋がるだろう。
「それで、今からどうするのかしら? 冒険者ギルドに行くか散策するかって言ってたけれど」
「ちょっと冒険者ギルドに寄りたいと思ってる。この街に来てすっかり忘れていたが、魔物の討伐品を放置したままでな。それをどうにかしないといけない」
「それって冒険者が真っ先にやる事じゃない。それを放置なんて、やっぱりどこか抜けてるわね……」
ソルテに呆れられながら俺達は冒険者ギルドへと向かう。
護衛依頼の報酬を受け取った事で、俺の中では全ての清算が終了したと思ってしまったのだから仕方ないだろう。
とはいえ、フォルテス・タルナーダの両パーティーにも素材の剥ぎ取りを手伝って貰っているし、ちゃんとその対価も渡しておかないといけない。
オスマンとターニャがギルドにいてくれればいいのだが。
「おお渉。二日ぶりか。ギルドに顔を出していないようだったが、あの後大丈夫だったのか?」
冒険者ギルドに入ると、運がいい事にオスマンが休憩所で昼食を食べているところだった。
少し早い気もするが、この後すぐに任務に行くつもりなのかもしれない。
「打ち上げの次の日は二日酔いで死んでいた。もう当分酒は飲みたくないな」
「はははっ。あれだけ飲めばそうなるだろう。だが次の護衛依頼前にもう一度宴会を予定している。勿論来てくれるよな?」
「酒はほどほどに頼む」
「そうしよう。リアも大変そうだったからな」
「私は別に」
そういえば酒を飲んだ日、俺と奏はリアにべったりとくっついて離れなかった気がする。
記憶が曖昧なのだが、酒が入ってリアに迷惑をかけたのかもしれない。
やっぱり酒は自重しなければいけないな。
「それで、今日はやけに大所帯だがパーティーメンバーを増やしたのか? それにしてはやけに小さいのもいるが」
「ひっ」
オスマンがルーナに目を向けると、ルーナは狼耳を垂らして俺の背後に隠れてしまった.
きっと睨みつけられたと勘違いして怖くなってしまったのだろう。
オスマンは優しくはあるのだが、見た目がいかついのがもったいないな。
「お初にお目にかかります。私の名前はソルテ。渉様に奴隷として買われた者です。いご、お見知りおきを」
「……奴隷? 渉が貴族なのは知っているが、こっちでの召使をわざわざ買ったのか?」
ソルテの自己紹介にオスマンはそんな疑問を投げかける。
「いや、ちょっといろいろあってな」
俺はルーナも紹介し、カジノに行ってから今に至るまでの経緯をオスマンに説明した。
話をするにつれオスマンが驚きに染まっていき、最終的には呆れるような表情で俺を見る。
「あるカジノが閉店したという話は聞いていたが、お前がそこまで追い込んだのか。亜種の件といい常識外れの事をする奴だな」
ソルテにも呆れられたが、俺はそんなにおかしなことをしてしまっているだろうか。
いかんせんこの大陸の常識に疎いところがあるためか、そんな大層な事をしたという自覚が全くない。
今までと変わらず生活もできているし、周りもそんなに騒ぎ立てていないというのも大きな要因だと思う。
「ああそうだ。亜種で思い出したが、素材をオスマン達に渡してない事を思い出してな。今日はそれを渡すためにギルドに寄ったんだ」
「素材? 何を言っている。あれは渉達が決死の覚悟で討伐した物だ。そんなものを何もしていていない俺達が受け取れるわけないだろう」
「いや、でも剥ぎ取りの時に人を集めて手伝ってくれたじゃないか。それに、俺達が亜種との戦闘に集中できたのもオスマン達がフェルを守ってくれたからだ。その礼に受け取ってもらいたいんだが」
「冒険者は普通そんなこと考えないぞ。まあお前は貴族だから常識が通用しないってのは分かるんだが、それでもお人好しすぎるだろう……」
オスマンは呆れたようにため息をつく。
なんだか今日は呆れられてばかりだな。
「その調子だと亜種の件がどう処理されたかも聞いていなさそうだな。素材を売っていないと聞いて安心していたが、そうもいかないようだ」
オスマンは昼食を取り終えると、席を立って俺達へ提案する。
「一度俺のパーティーが借りている宿に行こう。そこで少し詳しい話をさせてくれ」
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