???

「くははははは!奴め!我らの期待を裏切らぬ!まさか本当に討伐できるだなどと思ってもいなかったぞ!」


 草原の遥か上空。

 ダヴィードはその光景を目の当たりにし、歓喜に震えていた。


 その目に映るのは二度と動くことのない毒竜の死体。

 そして、その死体を作り上げた戦士の姿だった。


『亜種が一日と持たず討伐されるとはの。敵ながらあっぱれじゃ』


 竜が称賛するようにその功績を称える。

 竜もまた、毒竜が討伐されるとは考えていなかったのだ。


『あやつは今後、魔王様の障害となりうるやもしれぬ。亜種の猛毒を受けた今なら魔法も使えず、いともたやすく殺すことはできるがどうするのじゃ?』

「そんなことはせん。魔王様の望みは奴の成長。そしてその先にある、魂の解放なのだからな。ここで殺してしまってはそれも叶わなくなってしまうだろう」

『魂の解放?わしは魔王様と謁見したことがないから分からぬが、魔王様はいったい何を目的としておるのだ?』

「それをお前が知る必要はない。お前はただ魔王様の命に従い、それを遵守していればよいのだ」

『まあそうじゃの。知って雁字搦めにされるより、知らずに悠々自適に生きていられる方がわしには合っておる。まあ知って自由に行動できる方がいいがの』

「忠誠心に欠ける発言だ。そんな奴に魔王様の考えを話すわけにはいかんな。いつ裏切られるか分かったものではない」

『かかっ。わしは魔族であるから魔王様に付いてはいるものの、そこまで執着しておるわけではないからの。お主と違って、魔王様がいないと生きていけないわけでもない。いつ裏切られてもいいよう準備しておくのじゃな』

「お前がいなくなったところで代わりではいくらでもいる。だが、反旗を翻した暁には覚えておくことだな」

『そうするとしよう。それで、これ以上ここにいる理由もないのじゃろう?』

「ああ。一度魔王領に戻り、魔王様の次の手を待つことにしよう。あれが神殿に辿り着いた時、さらなる成長を遂げるはずだ。それを楽しみに待つとするか」

『かかっ。楽しみじゃな』


 そうして、一人と一匹はその場から姿を消していった。


 渉に降りかかる試練が続くことを示しながら。

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