第36話 依頼に向け頑張りましょう!
「また王女様と喧嘩したのですか」
「私は気にしないのに……」
リビングに戻った俺は何があったか説明すると、二人からそんな感想をいただいた。
リアは申し訳なさそうな顔をしているが、悪く言われて嫌味を言うぐらいは許してほしい。
奏も呆れてはいるが、それは俺に対してではなく、フェルティナに向けられているものだ。
生理的に受け付けないのは分かるのだが、どうしてそこまで悪く言えるのだと思っているのだろう。
護衛依頼を受けはしたものの、フェルティナがあの調子だと本当に護衛できるのか疑問に思えてくる。
無意識に手を抜いたりしそうで怖いのだ。
だが、依頼を受けた以上、やらなければいけない事だ。
護衛に向けて、万全の態勢で挑めるようにしておこう。
「渉様」
「ミア、見送りはおわ……ったぁ!なんでいきなり殴るんだ!」
フェルティナの見送りに行っていたミアが戻ってきたかと思うと、いきなり俺の脳天に拳骨をかましてきた。
その痛みに苦悶しながら、俺はミアに抗議をする。
ミアを見るとその表情は冷たく、背筋が凍るような感覚を覚えた。
「渉様。私は王族に対し、あのような発言はお控えくださいとお願いしたはずです。その
「い、いや、今回はかなり抑えたじゃないか。それに、喧嘩を売っている気は全くないぞ」
「相手の受け取り方で売っているか売っていないかは決まります。屋敷を出る際も、フェルティナ様は大変お怒りのご様子でした。気分を害されたことは間違いありません」
「だがな、仲間を侮辱されて何も言わないのは間違っていると思うぞ。あのままフェルティナの事を野放しにしておいても、何も事態は好転しない。獣人と仲良くするなんて夢のまた夢だろう」
「私もそれは重々承知の上です。ですが、言葉という物をお選びください。言葉が過ぎた際、私は諫めましたよね?なぜそれを受け取ってくださらなかったのですか?その後にさらに渉様は挑発するような言葉を発しましたよね?なぜそのような言動を取ったのですか?渉様は王族に何か恨みでもおありなのですか?」
「……ごめんなさい」
ずいずいとミアに言い寄られ、俺は返す言葉もなく小さく縮こまる。
ミアが途中で諫めてきたことは分かっていたし、その後に軽はずみな言動をしたのは俺が悪い。
王族スキーなミアからしたら、そのような言動を取る俺が許せなかったのだろう。
それに関しては、謝る事しかできない。
「ミア。その謝り方は反省していない時のものです。本当に言い聞かせたかったらもっと強く言っておいた方がいいですよ」
奏め、余計な事を。
ミアの言い分は分かるが、リアが馬鹿にされたことには変わりない。
それに対する意趣返しなのだから、あれぐらいは言って許される範囲だと思っている。
だから反省する気はないと思っていたのだが、奏にはそれを見抜かれてしまった。
だが、わざわざそれをミアに伝える必要はなかったのではないだろうか。
俺はびくびくしながらミアの方を見ると、ミアは諦めたようにため息をついていた。
「はぁ……まあ渉様の言い分も分からないものではありません。今回は二度目なので、大目に見る事にしましょう。ですが、次もし同じような事をした場合、覚悟しておいてください」
「はい」
ぎろりと鋭い視線を送ったミアに、俺は再び背筋が凍るのを感じる。
次やったら間違いなく殺される。
ミアの前では、挑発するような言動は控えるように心がけようと思うのだった。
「それで、渉様はフェルティナ様の護衛依頼をお受けしたわけですが、私も護衛についていくべきでしょうか?」
フェルティナへの対応の話は打ち切られ、今後の動きについての話になった。
護衛に行くと、最低でも二か月はこの屋敷を空ける事になる。
その間の管理もどうしようか決めないといけない。
「神奈は外に出たがらないだろうし、親父も突然帰ってきたりするからな……できる事なら、ミアは屋敷に残ってもらいたいと思っていたんだが」
「私もそうさせていただきたいと思っておりました。二か月も屋敷を空けるとなると、屋敷のお手入れも大変になってしまいますから」
俺の提案にミアも乗ってくれる。
ミアとしても屋敷を空けるのは不安のようで、残ってくれるというのなら大助かりだ。
「助かる。俺達のいない間の屋敷の事はミアに任せよう」
「お任せください」
これで、俺達が不在でも安心して屋敷を空けられる。
依頼依頼も他の事は考えず、集中して取り組めそうだ。
「あとは依頼に向けてできる事をするだけだな」
「そうですね。頑張りましょう!」
「おー」
魔法の開発や出現する魔物の情報集めなど、やらなければいけない事はいくらでもある。
依頼で向かうというエレフセリアに関する情報も集めないといけないな。
こうして、俺達はフェルティナの護衛依頼に向け、動き出すのだった。
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