第24話 ミアとの特訓、その2です!
「この魔法の原理自体は簡単だ。この
「倉庫と繋げる魔法ですか。という事は、物を倉庫に瞬間移動させているイメージですか?」
「そうだな。イメージとしてはそんな感じだ」
飲み込みのいいミアは、なんとなく
物の移動をイメージできるのなら、あとは置き場のイメージだけだ。
「それで、その物を預ける倉庫だが、何もない、誰もいない空間を想像するのが一番好ましい」
「何にもない空間ですか?」
「そうだ。実際にある屋敷の倉庫と繋げるのも手だが、それだと誰かが持って行ってしまう可能性がある。自分の大切な物を次元収納に預けておいて、それがなくなったら嫌だろう?」
「そうですね。必要な時に取り出せないとなると、困る事も出てきてしまいます」
「そうならないために、実際にある倉庫ではなく、何にもない空間をイメージするんだ」
「なるほど……ですが、ですが、何もない空間に物を預けるというのは不安ではありませんか?何もないのですから、消えていってしまうような気がします」
そうか、何もない空間というとそう感じてしまうこともあるのか。
確かに、何もない空間というものはすごく不安定なイメージを持ってしまう。
はかなく、何があるか分からず、ちょっとしたことで崩壊するような感覚。
それこそミアの言うように、消えてしまいそうなイメージを持っても不思議じゃない。
今までそんな事思ってもいなかったが、何もない空間に物を預けるというのは心もとないかもしれない。
「そうだな……じゃあいっそのこと、倉庫のような空間をイメージしたらどうだ?この世界と隔離された、絶対に誰も入れないような堅牢で広い倉庫だ。それならなくなるようなイメージは消えるんじゃないか?」
「世界と隔離された倉庫ですか……難しそうですが、それなら何もない空間より想像できそうです」
「よかった。預ける空間の事は解決できそうだな」
どうやら、次元収納に関する大まかなイメージは掴めたようだ。
あとは実際にやってみて、魔法を完成させるだけだ。
「イメージはこれで十分だと思う。他に気になるところはあるか?」
「あの、魔素の流れはどういったように想像すれば良いのでしょうか?道具袋に這わせるように考えているのですが」
魔法を完成させるにおいて、とても重要な質問がミアから飛んきた。
魔素の流れは、その魔法を完成させるのに非常に重要となっている。
魔素の流れを確立するのとしないのでは、魔法の成功率と完成度に大きく影響してくるのだ。
もし魔素の流れを無視すると、
つまるところ、魔法が未完成な状態になってしまうのだ。
なので、魔素の流れをはじめに確立させることは、魔法を完成させる上で非常に重要なものとなる。
「俺も初めはそれで試したんだが、どうにもうまく魔法が作用しなくてな。今は魔素の塊を作って、それに物を放り込む形で落ち着いている。人によってやり方が違うようだから、まずは這わせる形でやってみて、うまくいかなかったら俺の方法で試してみるといい」
「分かりました。では試してみます」
そう言って、ミアは魔法を編み出すために集中し始めた。
魔素の流れを作るときは、どうしてもただ立っているだけに見えるんだよな。
自分の魔素の流れは感じ取れるものの、相手の魔素の流れは不思議と感じ取ることが出来ない。
もし感じ取れるようになれば、何かの魔法に応用できるかもしれないな。
魔素の流れを読み取れるような魔法を考えてみるか。
時折ミアの質問に答えながら、魔法を開発することしばらく。
昼になり、俺とミアは魔法の訓練を打ち切ることになった。
「やはり難しいですね……物を入れることが出来ても、取り出すときに問題が生じやすいように思います。取り出せなかったり、思ったものが取り出せなかったり。課題はまだまだありますね……」
次元収納の魔法自体は習得できたものの、未完成のまま終わってしまったミアが、訓練の反省点を振り返っていた。
ミアは少し難しい顔をしているが、魔法の習得は俺より断然早い。
ミアがこの調子なら、明日にでも次元収納の完全習得が可能になるだろう。
「補助魔法は攻撃魔法なんかと違って繊細な面が大きいからな。リアが言うには、攻撃魔法はぶっ放すだけだから簡単なんだそうだ。それに比べて補助魔法は絶対に試行錯誤が必要で、それなりに知識もないと不完全なものになりやすい。そんな中ミアは、俺が二日かけた工程を一日で終わらせたんだ。きっと明日には次元収納も完成するだろう」
「何もないところから始めた渉様と比べるのは違うと思いますが、そう言っていただけると恐縮です。ですが、やはり補助魔法はやはり扱い辛いですね。やはり単純に使いやすい攻撃魔法が羨ましく思えてしまいます」
「そうか?確かに攻撃魔法も魅力的だとは思うが、それに劣らず補助魔法もいいと思うぞ。習得までに時間はかかるが、完成させれば攻撃魔法よりも便利だしな。俺はむしろ、攻撃魔法じゃなくてよかったと思っている」
「便利ですか。今まで便利だと思えたことがなかったので、いまだに攻撃適正に強い憧れが消えません。渉様のように使いこなせるようになれば、その印象も変わるのでしょうか」
「間違いなく変わる。実戦をしていないから実感が湧かないかもしれないが、今まで完成させてきた能力を上下させる魔法も凄く使えるんだぞ?そうだ、今度一緒に
「是非ご一緒させて下さい。このような心情では、使える魔法も使えなくなってしまうかもしれません。イメージが重要だという事は学んでおりますので、その悪いイメージを払拭できる機会があるのなら、その機会にありつきたいと思います」
ミアはいつものクールな表情を崩していないが、その発言からはとても熱いものを感じる。
ミアは魔法の訓練を始めてから、とても貪欲に物事を学び取ろうとしている。
きっとそれは、親衛隊に入ることが出来るかもしれないという期待感からなのだろう。
ミアは過去に親衛隊入りをできず、悔やんでも悔やみきれないような思いをしている。
しかし、俺が国王の前で大見得を切ったことで、再び希望を取り戻したのだ。
俺はそれに応えるため、ミアにできる限りのことを教えたいと思っている。
ミアが望むのなら、全力を以てそれをサポートするつもりだ。
事は早い方がいい。
近いうちにでも時間を作ってもらい、ミアを連れて任務に行ってみることにしよう。
「兄さん、ミア。お昼が出来ましたのでリビングに来てください。リアも神奈も待ちわびていますよ」
訓練の終わりと重なるように、奏の呼び声がここに届いてくる。
最近は昼までミアと訓練することが多く、昼は奏が担当することが増えていた。
奏もミアが魔法訓練に集中できるよう、間接的に協力してくれているのだ。
大変ありがたいことである。
「ちょうどよかったな。文句を言われないよう、早いとこリビングに向かうとしよう」
「そうですね。本日もご指導、ありがとうございました」
遅くなるとリアはともかくとして、神奈からうるさいほどに文句を言われてしまう。
俺達は言いがかりをつけられないよう、急いで屋敷の中へと戻るのだった。
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