誓い


 たどり着いたのは、ココロが幻覚として見ていた、あの砂浜だった。

 白と青。白い砂浜と蒼い海が広がり、地平線と水平線が交じり合っていた。


「……今度は、幻覚じゃなさそうだ」


「幻覚?」


「ミロクに会った時から、時々この光景を見るんだ」


「正夢、ですか?」


「白昼夢の正夢なんて聞いたこと無いな」


「確かに」


 クスクス、といつものようにミロクが笑った。

 ココロもそれに釣られて、はは、と軽く笑った。

 ミロクは砂浜へと駆け出して、波と戯れる。

 誰も居ない浜辺。

 その意味を二人は知らない。いや、知ることは無いだろう。


「ココロ」


 砂浜に座っていたココロにミロクが呼びかける。


「何だ?」

「お願いがありますの」

「お願い?」

「ええ」

 海で濡れたスカートの端を絞りながらミロクはココロの近くに来て、そのまま隣に座る。


「ねぇ、ココロ。いつか、きっとわたくしを殺してくださいな。――わたくしが壊れる前に」


 それは、不死を望まず不死になってしまった者の願い。


「……分かった」

 ココロは頷いた。


「誓うよ。ミロクが壊れそうになった時、どんな事があっても、どんなに難しくても、必ず殺すって」


 生は死があることで輝く。だから、ココロはミロクに誓った。


「だから、それまでは一緒に居るよ」

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