6 「クズ」と呼ぶ
結局、鉄平と京華の課題に付き合ったのは四十分ほどで、ミコトは「用事があるから」と、先に一人で帰った。
実際には用事など無かった。が、今の自分が置かれた状況から、どうしても落ち着けずにいたのだ。この訳の分からない尻尾をどうにかしなければ……。そんな思いがあって、出来るだけ独りになって考えたかったのである。
「ああは言ったものの……特に宛てがあるわけじゃないしなぁ……」
昨日から工事しているという橋の袂までやって来た。が、今回は歩行者のみ通行が可能になっていた。
しかし、ミコトは昨日と同じルートで帰るつもりでいた。つまり、途中の藤野稲荷に寄ってみようと考えていたのだ。もちろん、そこで何か解決策が得られるとまでは期待していないが……。
だが、ミコトが橋を渡らず、目前で左折しようとした時だった。
「……えるか?」
突然、ミコトの頭の中に声が響いてきた。それもノイズが混じったような不明瞭な声で、何を言っているかはよく分からない。
「な、なんだぁ?」
ミコトはキョロキョロと辺りを見回す。無論、何人かの人の姿は見て取れるが、それらしい人物はいない。そもそも、自分の近くに居る人間が話しかけているとは到底思えなかった。
この声は……あたかも自分の脳に直接響いてきている。そんな不思議な声。テレパシーという物が存在するなら、まさにこんな具合に聞こえるのだろうと思う。
「聞こえるか?」
また声がした。
ミコトはビクッと、通電しているプラグに触れて感電してしまった子供よろしく、全身を硬直させる。
「聞こえているなら返事をせい」
昨日、藤野稲荷の前で聞いた少女のような声だ。
ミコトはもう一度辺りを見回すと、慌てて道から外れ、河原へと下りて行った。
どうせ他の者には聞こえまい。だとすると、往来の真ん中で一人、喋っているのは変な奴と思われる。河原に下りれば一人で喋っている姿を見られる心配も少ないだろう。
「お、おまえ、何者だ? あたしに生えてる尻尾はおまえの仕業か?」
「おお! ようやく通じたか! いやはや、随分と手こずってしまったわい」
声の主は、ミコトが反応した事で安堵したようであった。が、ミコトの方は心穏やかではいられない。
「ようやく通じたか……じゃないだろ! 何なんだ、おまえは! この尻尾、なんとかしろ!」
「まあ、そう急くでない。まずは説明せにゃならんだろう? 物事には順序というものがあるのじゃ」
声は幼い少女のようであるのに、口調はまるで老人のものだ。
「おぬしに取り憑いたのは良かったのじゃが、おぬしの魂魄に波長を合わせるのに苦労してのう……。今になって、ようやっと通じたというわけじゃ。特殊な強い霊力を持った者なら容易いのじゃがのう……」
声の主はため息混じりに告げた。実体があるのなら、お手上げのポーズでもしていそうなところだ。
「まあ、そのような訳で今はおぬしの魂魄……頭の中にと言った方が理解しやすいか……直接語りかけておるという訳じゃ」
しかし、それに対し……しばらく沈黙が続く。一分くらい間があって、
「オイ……。何か言わぬか」
痺れを切らした声の主が少しだけ怒り口調で、再び切り出した。
「なんだ! おまえはあたしの頭の中に話しかけてるのに、あたしが頭の中で言ってる事は聞こえないのか?」
「そんな器用な芸当ができるはずもあるまい」
どうやらミコトは頭の中で一生懸命、何かを訴えていたらしい。そもそも、相手が自分の頭に直接語りかけているのなら、当然のように自分の頭の中で訴えている事も通じているものだと思っていたのだ。が、それはあっさり声の主に否定されてしまった。
「ぐっ……随分と一方的なシステムだな……」
「そう万能には行かぬものよ。ごく普通の人間である、おぬしの魂魄に波長を合わせるだけでも一苦労じゃったからのう」
確かに霊能力だの何だのがあるわけでは無いが、あらためて「ごく普通の人間」と連呼されると少々癪に障る。
「波長ねぇ……。なんか……ラジオの周波数みたいだ」
ムッとしていたので、ちょっぴり皮肉を込めて言ったのだが、
「まあ、分かりやすく言えばそういう事じゃよ」
と、あっさり肯定されてしまった。
「んで? なんであたしに取り憑いてるんだ? 出来れば早急に出てってもらいたいんだが。てか、さっさと出てけ」
「その前に……まずはワシが何者であるかを名乗らねばなるまいのう」
そして声の主は咳払いをひとつ……。頭の中に直接話しかけているのに、わざわざ咳払いとは……白々しい奴だと密かに思う。
「ワシの名は葛の葉。もう分かっておるとは思うが、藤野稲荷社の石像を依り代にしてい白狐じゃ」
「葛の葉ぁ? じゃあ、『クズ』って呼ぶことにする」
その発言で一瞬、会話が止まった。さすがに絶句したらしい。
「む……むぅ……。甚だしく馬鹿にされている気がしてならぬが……」
「いちいち葛の葉とか呼ぶのメンドい。名前の間に〈の〉とか入るのウザい」
ミコトの言葉には感情がこもっていない。さっさと出て行ってもらいたい一心で、まともに相手にすらしたくないという思いが露骨に表れていた。
「まあ、呼び方なぞ好きにすれば良いわ。ワシはおぬしの事を普通に『ミコト』と呼ばせてもらうとしようかのう」
「あ、あたしの名前を知ってるのか?」
冷静になって考えてみれば、ミコトに取り憑いてから一日近く経過しているのだから、意識を共有していたのならミコトの名前を知っていても不思議は無い。単にミコトと会話が出来なかったというだけなのだから。
しかしながら、クズ曰く、どうやらそう言った理由ではないようだ。
「おぬしの父親にな……おぬしの粗暴な振る舞いを改善してもらいたいと泣きつかれたのじゃ」
「はぁっ?」
あまりにも意外な人物が話に出て来たため、思わず声が裏返る。
「何でパパが? どうしてクズとパパが知り合いなんだ? それ以前に、あたしの粗暴な振る舞いってどういう事だ?」
矢継ぎ早に質問を投げかける。
それにしても……どうやらミコトは、自分が粗暴な振る舞いをしているという自覚が無いらしい。蹴ったり殴ったりがあまりに日常茶飯事になっているため、物事の善悪という感覚が些か麻痺しているのかもしれない。
「おぬしの父親というのは、おぬしの守護霊でもあってな。本来であれば守護霊がおぬしの行動を監視し、必要に応じていさめる事があるのじゃが……おぬしの場合、断罪と称して暴力を振るう行為が慢性化し、歯止めが利かなくなっているようじゃな。もはや守護霊の力をもってしても抑えられなくなっているとの事じゃ」
「な、なにぃぃ?」
守護霊が自分の父親という事実にも驚きだが、それ以上に自分が今まで正しいと思ってやってきた行動が否定された事にミコトは混乱した。
「確か……おぬしの父親は藤野稲荷社のすぐ近くで亡くなったのじゃったな?」
例のトンネルの事だ。記憶には無いが、何となく通るのに躊躇いがある場所であるのだが……。
「仏となった者は、自分が亡くなった場所に現れる事が非常に容易い。守護霊となった者でも、守護する対象の行動範囲のほかには、移動できる場所が限られておる。おぬしの父親は制御できなくなったおぬしを誰か大きな力のある神のような存在に願い出て、なんとか改善してもらいたいと願っておった訳じゃが……そこで、自分が亡くなった場所の近くにあった藤野稲荷に藁にも縋る思いで頼み込んで来たという訳じゃ」
「う~ん……。おまえの言ってることは半分くらいしかわからん」
ミコトは偏頭痛に悩まされている患者の如く、頭を抱えて唸る。そもそも、死後の世界の話やら神仏の話など、ミコトには全く関心の無いことなのだから無理もない。
「まあ、守護霊の話や死後の世界については本題ではない。それらは聞き流してくれて構わぬよ」
「つまり、あたしが態度を改めない限り、おまえは出てってくれないって事か?」
「うむ。理解が早くて助かる」
クズは少しだけミコトの事を見直したようだった。
少々、楽観視しているようなクズとは裏腹に、態度を改めるという課題を与えられたミコトにとっては、それは難題であった。自分が間違っていると思っていないし、それ以前に自分の行動は至極普通で、他人とどこが違うのかすらわかっていないのだ。その証拠に、
「それで……? どうしたら出てってくれるんだ?」
などと、今までの分かっていたような口振りから見ると、実にとんちんかんな質問をする。
「……やはり、理解できてはおらなんだか……」
クズのため息が聞こえてくるようだった。
クズは「そうじゃのう……」と、しばし思案をめぐらせると、
「では、こうしよう。おぬしは今日から、ワシの神通力を用いて、あやかしに取り憑かれて困っている者を助けよ」
「ええ……と……。はぁ?」
ミコトは突然、聞いた事も無いような外国語で話しかけられたかのように、きょとんとしている。
「それも一人では無い。一○八人の者を救う……つまり、人間に悪さをしている一〇八体のあやかしを祓ってもらう」
「いやいやいや! それ以前に、あやかしって何だ?」
ミコトにしてみれば、クズの言っている事はツッコミどころ満載であった。
「ん? 何だと聞かれても、あやかしはあやかしじゃ。それ以上でも、それ以下でもない」
「いやいやいや! おまえの言ってる事、意味わからん! 丸々意味わからん!」
どうも話が噛み合わない。まあ、ミコトに限らず、普通の良識ある人間であれば誰しもミコト同様に混乱するであろう。クズの言っている事は、それだけ常識の範疇を逸している。
「まあ、妖怪と言った方がおぬしにも分かりやすいかのう?」
「あやかしがイコール妖怪なのは分かってる! あたしが言いたいのはそういう事じゃなくてだな」
「何をそのように周章狼狽する事がある?」
クズは飽くまで自分の言う事が世間一般の常識だとでも言いたげだ。人でない者である故なのか、やはり人間とはズレているというか何というか……。
「だ、だって、妖怪なんておとぎ話の中だけの存在だろ! 実際にいるわけ無いじゃないか!」
「ああ、そうか……。おぬしには大した力が無い故、彼らの姿を見ることが出来ず、俄には信じられぬという事じゃな?」
いちいち「力が無い」だ、やれ「普通」だの言われると、その都度カチンと来る。だが、今はその事に対して文句を言えるほど思考回路に余裕が無い。
「み、見ることが出来ないってどういう事だ? そんなの空想世界の産物だろ!」
「ふむ……そうじゃなぁ……。では、丁度手頃な奴がすぐそこに居る。ワシがおぬしの魂魄と一体化した事で、おぬしにも見えるようになっておるはずじゃ」
「はぁ?」
言っていることはよく理解できない。が、クズが「橋の向こう側を見てみよ」と言うので、素直に言われた先に目をやる。すると……。
「な、な、なんだ、あれ?」
橋を渡った先に、川と平行して続いている遊歩道があるのだが、丁度、ミコトから向かって正面を歩いている中年男性の肩に妙なモノが負ぶさっている。
白っぽい半透明の丸い塊。その丸い塊からは小さな手足が直接生えている。大きさはエクササイズに使用されるバランスボールくらいか……。
「オバリヨンと呼ばれるあやかしじゃな。家まで背負って帰る事ができれば、金の瓶に変じるとも言われているが、それはオバリヨンの負ぶってくれという要求が聞こえた者だけじゃ。あの男は全く気付いてはおらぬし、ただ両肩が重くなった事に苦痛を感じておる。要するに、オバリヨンの一方的な悪さじゃな」
「え? え?」
ミコトは己の目に映る奇妙極まりないモノが、ただただ理解できず、目を白黒させている。
「まあ、大して害は無いが、このまま捨て置くのも忍びない。行って、あやつを祓ってくるのじゃ」
「はぁ? いやいやいや! 祓ってくるのじゃと言われても、どうしろって言うんだ? おまえ、説明不足にも程があるぞ!」
どうも勝手に話を進められている上に、行き当たりばったりな事を要求されている気がする。
「どうするかは奴に近付いてから説明するわい。ホレホレ、早く後を追わぬと見失ってしまうぞ」
「だぁぁ、もう!」
渋々、ミコトは土手を上がり、ぐるりと回って橋を渡ると、オバリヨンとやらが負ぶさっている中年男性を追った。
中年男性はやや前屈みになったまま、いかにもしんどそうな表情を浮かべて歩みを進めている。それも牛歩の歩みよろしく、一歩一歩引きずるかのような、かなり重い足取りだ。
当然、自分の肩にそんなモノが乗っている事など気付いていないのだろう。だから、一度も後ろを振り返る事も無く、ただ俯き加減に数歩先の地面ばかりを見ている。
「確かに辛そうだな……。どうしたら良い?」
「ワシの神通力を使って、おぬしにもあやかしに直接触れる事が出来るようにしてやろう。あとはあの者からオバリヨンをおぬしの手なり足なりで引きずり下ろせば良い」
「ええっ? あたし、あんなのに触るの嫌だ!」
「四の五の言うでない。ホレ!」
クズがひと声かけると、ミコトはまるで全身を何か温かい物で覆われたような感覚を覚えた。それはあたかも見えない毛布にくるまれているような感覚とでも言おうか……?
「あんなモノ、触ったところで害など無い。さっさと引っぺがしてしまうのじゃ」
「うう……」
仕方なく中年男性の背後にそろりと近付く。彼はおろか、オバリヨンの方もミコトには気がついていない様子。
恐る恐る手を伸ばすと、薄気味悪い半透明なその物体に触れた。それは何と表現すれば良いだろう? クラゲのようなプルプルとした感触でありながら、ゴムボールのような丈夫さも兼ね備えていると言った具合。あまり味わったことのない感触だ。
さすがに自分の体に触れられたオバリヨンも、ようやくミコトに気がつく。のっぺりとしたその顔がこちらを向いた。
その顔には二つ……どんよりと曇った目が付いていた。
「うっ……」
さすがのミコトもこれには一瞬、怯んでしまう。
「ホレ! ビクビクしとらんで、さっさと引っ張ってしまえ!」
クズに一喝されて、
「このぉ!」
ミコトは遮二無二、両手でオバリヨンを引っ張ると、後ろに放り投げる。相撲で言う、うっちゃりのような形だ。
するとどうだ。オバリヨンは綺麗な放物線を描いてミコトの数メートル後ろに落下。ぶにゅっと弾力性のある音をたてて、大きなヒキガエルのように地べたに突っ伏す。
「ん?」
ミコトが背後で妙な声をあげたからだろう。中年男性が振り返り、訝しげな目でこちらを見ている。
「どうかしましたか?」
その問いに、どう答えて良いものか。
「あ、い、いえ。は、蜂が目の前をブンブン飛び回ってたから……。そ、そう! 蜂!」
しどろもどろに苦し紛れの言い訳をする。まあ、本当の事を言ったところで信じてもらえるはずも無いのだから仕方ない。彼は、
「はあ……」
きょとんとした様子で、そう答えると、そのまま歩いて行ってしまった。しかし、先程とは打って変わって足取りが軽やかだ。
ミコトは「ふぅ……」とひと息。そして、背後を振り返ると相変わらず地べたに這いつくばっているオバリヨンを見下ろす。
「コイツ、どうすんだ?」
「ふむ……。放置して、また悪さをされても困るしのう……」
オバリヨンは地べたに突っ伏したまま、ピクリとも動かない。が、気を失っているわけでは無く、自分の身に何が起こったのか理解できずに、ただ呆然としているだけのようだ。
「よし……ミコトよ。口を開くのじゃ」
「はぁ?」
ミコトは眉を顰める。何かは分からないが、どうせまた、変なことをさせるつもりだろう……。それだけは薄々感じていた。
「こやつを食うのじゃよ」
さすがにこれにはミコトも泡を食った。
「な、なに言ってるんだ! こんな奴、食べられるか! おまえ、あたしに嫌がらせするつもりで取り憑いたのか!」
「心配には及ばぬ。おぬしの体を借りて、ワシが食らうだけじゃ。まあ、正確に言えば……ワシの中に一時的に封じ込め、浄化させてから吐き出してやる。こやつは純粋に浮き世で暮らすあやかしじゃからのう」
「言ってる意味がさっぱりだ……」
心配無いと言うのだから、本当に心配は無いのだろうが……それにしても自分の体を借りてと言われると抵抗がある。
「ほれ。百聞は一見にしかずじゃ。大きく口を開くだけで良い」
「え~……」
まるで汚水の中に飛び込めとでも言われたかのように、心底嫌そうな顔をする。しかし、いつまでもここで押し問答を繰り返していたところで帰ることも出来そうにない。
意を決して口を開いてみる。
すると地べたに突っ伏していたオバリヨンは勢いよく、ミコトの口に吸い込まれた。大きさから考えても一気に飲み込めそうも無いのに、それは瞬時にミコトの口に収まりきる大きさに形を変えて吸い込まれていったのだ。
味は無い。確かに口から喉の奥、そしてお腹へと入っていった感触はある。が、それは空気を飲み込んだときの感覚に似ていた。それでもミコトは、
「うげぇぇぇ! 飲んじゃったぁ」
変なモノを飲み込んだという事実に不快感をあらわにし、悪心に喘いでいる。
「まあ、こんなところじゃろうな。あと一〇七体じゃ」
「ひ、ひとつ聞くけど……一〇八体って、いわゆる煩悩の数だから、それに合わせてって事なのか?」
するとクズはミコトの頭の中でクスリと笑った。
「おぬし、少々勘違いしておるようじゃが……煩悩が一〇八と呼ばれるのは具体的な数字では無いぞ。この場合に使われる一〇八というのは、数え切れないほど沢山という意味じゃ」
「じ、じゃあ、何であたしは一〇八体もあやかしを祓わなきゃならないんだ?」
「ふぅむ……」
クズはしばらく考えるような物言いをすると、やがて「適当……かのう? そんなものは、単なるワシのさじ加減じゃ。深い意味など無い」
「い、いい加減な奴だなぁ……。おまえ、本当に神様の使いなのか?」
「一応はのう……」
のらりくらりとしていて、どうにもつかみ所が無い。
(こういう奴は苦手だ)
ミコトは心の中で、己の境遇を嘆いた。
「それともう一点……ワシはこうしておぬしと話をしているだけでも霊力を消耗しておるのでのう……。三日起きて、二日眠った状態になる。よって、ワシが眠っている時間帯にあやかしを祓っても数に入らぬので、そのつもりでな」
「それじゃあ、おまえが出て行くのが遅くなるじゃないか!」
「仕方あるまい。どうせ急いだところで、おぬしの性分が一朝一夕で直るとは思えぬしのう」
そしてクズはカラカラと笑う。ミコトは完全に、この海千山千な白狐の手のひらで踊らされていた。
「ひとまず、あやかしに憑かれて困っている人間を感知できる力は与えておこう」
「ん?」
ミコトのお尻から生えている尻尾がわずかに温かくなったような気がした。
「何をしたんだ?」
「そう言ったモノが近くに居る際、その尻尾で感知できるようにしておいた。どう感知できるかは……まあ、その時が来ればわかるじゃろう」
またしても、適当な物言い。
ミコトは訝しげに尻尾を見つめていたが、今は何も変化がない。
結局、それ以上はクズと話をする気にもなれず、黙って家路に就いた。
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