第13話 大隅5

「下山できた~♪」


一夜を山で過ごしたライとヨナルデパズトーリは山を下りてきた。


「よかった・・・はぁ・・・はぁ・・・。」


ふもとの道が交差する所までやってきた。


「ライ、ありがとう~♪」


ライは少女を背中におんぶして、山を下って来たのだった。


「ヨナちゃん、降ろすよ?」


そう言うと、ライは少女を背中から降ろし、道に立たせた。


「痛い!」


少女の足のケガの具合が悪いらしい。


「大丈夫。」


ライは心配して、フラっとした少女を抱きしめてしまう。


「キャア~♪ ライったら~♪」


少女は少し照れながら、ライを見つける。


「ハハハ・・・。」


ライは少女が悪魔と聞いてから、引き気味である。パチ。少女は瞳を閉じてライに向け唇を尖らせる。


「え!?」


ライはたじろいて困ってしまう。


「ワンワン!!!」


その時、ライの元ペットのハチの霊が妖怪を発犬して吠えた。ブチ!いいところだったのに、邪魔された少女はキレる。


「せっかくロマンチックなムードだったのに!!!」


少女の怒りは、足の痛みを忘れさせる。


「後ろ!」


ヤンボシが、ついて来ていた。


「前!」


道が交差していたので、辻神がいた。


「私の恋を邪魔した罪は償ってもらうわよ!!!」


少女の集中力と魔力は極まっていた。


「闇落ち!!!」


何もない空間に黒い渦が表れ、2妖怪を吸い込んで、消えていった。


「すごい!」


ライは少女の術に驚いた。


「スッキリした~♪」


少女はストレスを発散して、気分爽快になった。ピキン。少女の足に痛みが走った。


「痛い。」

「大丈夫?」


少女の足はかなり悪いみたいだ。


「ライと一緒にいたいけど、私、治療しに国に帰るわ。」

「ほっ。」


少女が国に帰ると聞いて、ライは安心した。


「私に会いたくなったら、メキシコか夜の山にやってきてね。」

「わかったよ。」


2人は見つめ合うが、


「離れられなくなるから、もう行くわね。」


少女はライに手を振りながら、


「自分、闇落ち!」


黒い渦が表れ、


「ライ、また会いましょうね~♪」


少女は手を振りながら黒い渦に飲み込まれていった。


「ヨナちゃん、またね。」


ライも手を振りながら、少女が消えていくのを見ていた。



「おかえり~♪」


海ちゃんは桜島でバカンスを満喫していた。


「ただいま。」


ライの表情は少しだけたくましくなったようだ。


「山の河童さんに、ちゃんと届けてきましたよ。」

「それだけなのに遅かったな、カワイイ女の子でも見つけたか?」


少女は無邪気にからかうつもりで気軽に言った。


「いましたよ、カワイイ女の子。」


ライが答えると、


「ライ!!! おまえには海ちゃんがいるだろう!!!」


少女は首の辺りの服を掴み、ライを前後に揺らす。


「悪魔でしたけどね・・・。」


ライは暗い気持ちになった。


つづく。

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