第12話 大隅4

「あ、人だ!」


ライは夜を山で迎えることになった。どこか休憩できる所を探していると、木にもたれかかっている人影を見つけた。


「大丈夫ですか?」


ライが近づいて声をかけると、


「わぁ!? ビックリした。」


少女だった。


「ケガをしてるんですね。」


少女は足をくじいていた。


「突然、空が暗くなって、辺り一面に複数の落雷がありまして・・・。」


ギク。少女がケガをしたのは、ライのせいだった。


「私はヨナルデパズトーリ。あなたは?」

「僕はライ。でんと言う人もいるけど。」


ライと少女は、お互いの名前を教え合い、


「でん? 変な名前~♪」

「君の名前も、かなり長いと思うけど。」

「ハハハハハッ~♪」


2人は意気投合した。パチパチ。暗くて危ないので、火を起こして、山で一夜を過ごすことになった。


「どうして、1人で山に来たの?」

「山に天狗がいるって聞いて、見てみたいな~と思いまして。」


少女は天狗が見たかったらしい。


「危ないよ、気をつけないと。」

「そうですね。ライ、助けてくれてありがとう~♪」


少女は知らない。落雷はライのせいだと。


「僕のせいでもあるし・・・。」

「人間の男の人と話すのは初めてだけど、ライは優しいね~♪」

「そんなことないですよ。」

「特別に、ヨナちゃんって呼んでいいよ~♪」


少女はライが気にいった。


「ワンワン!!!」


横になって眠っていた、妖怪発犬のハチが目覚めて吠えた。


「妖怪か!?」

「そうですね。天狗じゃなかったみたいですね。」


ライは剣を手に取り、少女は不機嫌に立ち上がった。カーン! カーン!

夜の山に斧で木を切るような音が聞こえる。バリバリバリ! ドカーン!

大木が倒れる音がした。空木倒し(からきだおし)、空木返し(そらきがえし)の仕業である。


「どこだ!?」


ライは妖怪の位置が分からないが、


「私がやります。」


少女は集中し魔法のような呪文を唱える。


「闇落ち!!!」


少女は遠隔魔法が使えるみたいだ。シーン。山の中が静かになった。


「ワウン~♪」


ハチも再び眠りについた。


「いったい何を?」

「音を出していた犯人を、冥界に送りました。」

「え!?」

「私、邪神テスカトリポカの化身とも言われる冥界の悪魔なんです~♪」


少女の正体は悪魔だった。


「せっかくのロマンチックなムードが台無しだわ。」


少女はガッカリしていた。


「もう夜も遅いし寝ようか。僕が見張りをやってるから。」


ライは悪魔の少女と出会ってしまった。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る