第10話 大隅2

「しまった!? 」


海ちゃんは失敗して頭を抱える。


「どうしたの?」


ライには分からなかった。


「大隅に着いちゃった~♪」


少女は開き直って、笑顔で言った。


「ええ!?」


ライはやっとわかった。首里姫を助けに薩摩に行かないといけなかった。


「大隅は薩摩の隣だし、そんなに外れてないよ~♪」


少女は前向きだった。


「そういう問題じゃ、ありません!」


ライは大声で指摘する。


「それに・・・。」

「それに?」

「あそこにも寄らないとな~♪」


少女は噴煙を上げる火山を指さす。


「火山!?」


ライは山の大きさと、今にも噴火しそうな雰囲気に驚く。


「桜島だよ~♪」

「桜島・・・。」


山の名前は桜島らしい。


「一度、行ってみたかったんだ~♪」

「観光!?」


無邪気な少女を、ライは指摘する。


「火竜がいる。」


少女は急に真顔になり淡白に言う。


「火竜が・・・。」


ライは桜島を見上げるのだった。



「着いた~♪」


海ちゃんとライは桜島の頂上、火口の入り口までたどり着いた。


「はぁ・・・はぁ・・・疲れた・・・。」


ライは初めての山登りに、少しバテ気味だった。


「おいおい、だらしがないな~。海ちゃんですら、頑張っているのに。」


少女はライの体力の無さに呆れている。


「そんなことを言われても、山登りは始めてだったので・・・。」


ライは言い訳をするが、


「言い訳は結構! さっさと一人で飛び込め!」


少女はライに火口に飛び込めと言う。


「え!? どこに!?」


ライは耳を疑った。


「火山~♪」


少女は楽しそうだった。


「海ちゃんは?」

「私は海の精だぞ! 火山なんかに飛び込んだら、蒸発するだろうが!!!」


少女は優柔不断なライの態度に逆切れした。キック! 少女はライを噴火口から蹴り落とした。


「つべこべ言わずに、さっさと落ちろ!!!」

「うわぁ!!!」


ライは頭から火山の内部に落ちていく。


「うわぁ!!! マグマだ!!!」


ライは火道を通って、火山下部のマグマだまりに落ちそうになる。


「うわぁ!!! 誰か助けて!!!」


ライが溶岩の中に落ちて溶けてしまうと思った時だった、ピカン。ライの体は球体に包まれ、下降スピードも緩やかになる。


「あれ? これはいったい?」


ライはマグマだまりの上に浮いていると、


「いらっしゃいませ~♪」


女の声が聞こえてくる。


「こんな熱い所に来てくれるなんて、感激です~♪」


女の子は涙を流して喜んだ。


「君は?」


ライが尋ねると、


「火ちゃんです~♪」


少女は、火の精だった。


「火ちゃん!? ・・・海ちゃんと一緒か・・・。」


ライは気分がゲッソリした。


「海ちゃんを知っているんですか?」


少女は海ちゃんと友達らしい。


「海ちゃんに蹴られて、ここまで落ちてきました・・・。」


ライは暗い気分で言いました。


「あの娘は、やさぐれていますからね・・・。」


少女も海ちゃんを思い出して暗い顔で言う。


「ハハハハハッ・・・。」


分かり合った2人でした。


「安心してください! 火ちゃんは海ちゃんとは一味違いますよ~♪」


少女は海ちゃんよりはましだと言う。


「どこが?」

「火ちゃんは、青春一直線です~♪」


少女は火の精らしく、暑苦しいらしい。


「ハハハ・・・。」


ライは海ちゃんと変わらないと思った。


「僕はライと言います。」


ライは、遅ればせながら自己紹介をした。


「こんな熱い所まで何しに来たんですか?」

「火竜に会いに来たんだ。」


少女に尋ねられたので、ライは要件を言いました。


「残念! 火竜様は旅行中です~♪」


火竜はいないらしい。


「旅行!? いつ戻って来ますか?」

「今は阿蘇山の別荘に遊びに行っています~♪」


火竜は阿蘇山にいるらしい。


「なかなか戻ってこないので、行った方が早いですよ~♪」

「そうなんだ・・・。」


火竜様はマグマ好きみたい。


「火ちゃん、海ちゃんもいるし、一緒に阿蘇山へ行きませんか?」


ライは少女を旅にさそうが、


「いけません。」

「え?」


ライは少女にフラれた。


「あなたは海竜様の竜玉を持っていますね?」

「はい。」

「だから、海ちゃんは、自由に行動できるんです。」


海ちゃんが自由奔放なのは、竜玉のおかげらしい。


「私がライと一緒に旅をしようと思ったら、火竜様の竜玉が必要です。」

「そうだったんだ。」


ライは、初めて竜玉の偉大さに気づいた。


「それでは、お帰りは、あちらです~♪」


パカ。火山の地層の壁に道ができた。


「ええ!?」


ライは来る時に火口から落ちたのはなんだったんだと思う。


「島の海辺まで出れるよ~♪」

「火ちゃん、ありがとう。」


2人は笑顔で分かれる。


「ライ、先に阿蘇山で待ってるから、必ず来てね!」


少女は先に行っているようだ。


「承知。」


ライの旅先に阿蘇山も加わったのであった。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る