第44話 俺と「あの方」4
俺は「あの方」と契約した。契約した内容は、結婚契約だった。レベルもスキルも持ったお金も共有財産になった。
「お金にしか興味のない、こんな勇者の男を夫にすることを誓いますか?」
「誓います。」
「なんでも直ぐに地獄の炎で燃やす、こんなダークプリンセスの女を妻にすることを誓いますか?」
「スーデビ! 燃やすぞ!」
「ヒイイ!?」
「誓います。」
俺はタキシード、「あの方」は、ウエディングドレスを着て、愛を誓いあう。神父が燃えてしまったので、神父役は、デビちゃんである。
「それでは、誓いの口づけを。」
こうして、16歳と思われる俺と「あの方」は、結婚式を挙げた。異世界だから、年齢制限はどうでもいいのだ。
「記念の教会だから、燃えないように防火魔法をかけておきましょう。」
「あの方」は、去り際に記念の教会が、何らかの事態で燃えないように、魔法をかけた。「あの方」も乙女なのである。
空から降ってきた女と、いきなり結婚生活を送ることになった。
「あなた、ご飯ですよ。」
「あの方」がエプロン姿で、俺のために料理を作ってくれる。
「おまえ、ありがとう。」
あくまでも、俺と「あの方」、あなたとおまえで乗り切るつもりである。
「スーデビ! なんであなたがいるの!?」
「え!?」
「私の新婚生活を邪魔するとはいい度胸だ! 小悪魔も偉くなったものだな!?」
「ええ!?」
「焼き尽くしてくれるわ!」
「神父をしたお礼に、料理をご馳走してくれるって、おっしゃったじゃないですか!?」
スーデビこと、小悪魔のデビちゃんもビビりながら、ご飯を食べていた。
「あなた、カップラーメンもいいけど、すき焼きもいいでしょう?」
「おいしいよ。子供の頃に親が死んで、それ以来、お金に困る生活ばかりしてきたから、カップラーメンしか食べてこなかったんだ。」
俺の守銭奴に理由がついた。俺の身の上は、かなり激動の人生だったらしい。
「なんて、かわいそうな、あなた!?」
「ケチなだけですよ?」
「スーデビ! 私の愛する人に対する暴言は、死を招くぞ!」
「ヒイイ!?」
デビちゃんは、お口にチャックをして、命乞いアピールをする。
「おまえの手料理は、おいしいよ。」
「あなたったら。もう。」
俺と「あの方」は、ラブラブであった。2人から、少し地獄の炎が漏れていた。結婚により「あの方」と能力を共有した俺は、地獄の炎に燃えなくなった。
「アチチチチっ!?」
デビちゃんは、火傷しそうだった。
「スーデビ! 早く帰れ!」
「ヒイイ!?」
ご飯を食べ終わった俺たち新婚さんには、デビちゃんは邪魔者なのである。
「私のラブラブ生活を邪魔するものは、誰であろうと燃やし尽くす!」
「ヒイイ!? 帰ります! 帰ります!」
デビちゃんが、恐れをなして帰ろうとした時だった。
「誰だろう?」
コンコンっと、ドアを叩く音がした。
「は~い、どちらさまですか?」
「あの方」が新妻風にドアを開ける。
「おまえたち、燃える覚悟はできているんだろうな!?」
「ギャア!?」
「あの方」は、怒りに任せて豹変する。ドアを開けた男2人は、ビビる。
「ストップ! その人たちは、王様の使いだ。」
やって来たのは、王様の使いだった。
「え? 王様の使い? 燃やしちゃあダメなの?」
「ダメ! 人間界は、上下関係が難しいんだ。」
「面倒臭いから、王様も燃やしましょうよ?」
「ダメ! 離婚するぞ!」
「燃やしません! あなた、私が悪かったわ! だから、許して!」
幸せを掴んだ「あの方」は、離婚という言葉に弱かった。
「冗談に決まっているだろう。俺がおまえと別れる訳ないじゃないか?」
「あなた、愛しています。」
夫婦の離婚の危機は回避された。
「学生結婚で、こんな話になりますかね?」
「あなた、スーデビは燃やしてもいいわよね?」
「いいよ、おまえの好きなように燃やしなさい。」
俺は、「あの方」にデビちゃんを燃やすことを許可した。
「スーデビ! 燃えてしまえ!」
「ギャア!? アチチチチ!?」
デビちゃんは、真っ黒焦げが、よく似合う。
「王様がなんのようだろう?」
俺は、王様にお城に呼ばれた。
つづく。
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