第45話 俺と「あの方」5
俺と「あの方」とデビちゃんは、王様に呼ばれて、お城に行った。王の間で王様に謁見した。とある王国なので、トアール王国のトアール王にしておこう。
「よく来た、勇者よ!」
王様は、王の玉座に座りながら、俺たちを迎えた。
「そこの女の子と小さいのは誰だ?」
王様は「あの方」と小悪魔に気づいてしまった。
「俺の妻とペットです。」
「妻です。」
「ぺ、ペットです・・・。」
俺は、とっさに王様の質問に答えた。
「おお! 結婚おめでとう!」
「ありがとうございます。王様。」
「ん? おまえはまだ16才だろう? 早まったんじゃないか?」
王様は、もっと遊んでからでも良かったのではないか、と聞いている。
「おんどれ! 私の幸せにケチつけたら、焼き殺すぞ!」
「あの方」は、王の間に炎の火柱を何本も出す。
「ヒイイ!?」
王様は、飛び上がり、ビビった。
「やめろ! 俺が、おまえを愛していないわけがないじゃないか。」
「あなた、恥ずかしいですわ。こんなに人がたくさんいる前で。」
俺の言葉に、「あの方」は、モジモジ照れながら顔がにやけている。俺と「あの方」は、手を取り合って、寄り添っている。
「熱い、熱い。」
デビちゃんは、「あの方」の豹変ぶりに、呆れている。
「なんだ!? 今の炎は!?」
「王様、手品でございます。」
「そうか。手品か。」
王様も、それ以上は、深入りしなかった。
「今日、勇者を呼んだのは、他でもない。魔界に攻めこもうとした、最前線の勇者たちが全滅した!」
「なんですって!?」
魔王を倒すための攻略組は、何人も強い勇者がいたはずだったからだ。
「どうして、全滅したのですか!?」
「地獄の炎に焼き尽くされたという。近隣の町も山も海も全て焼き尽くされて、今も、炎は燃え続けているという。」
もちろん、犯人は「あの方」である。
「ドキ!?」
「ヒヒヒ。」
「スーデビ、笑うな。」
「はい!?」
「あの方」は、様子をうかがっていた。
「もう、この世界に勇者は、お主1人しか残っていない。魔王を倒しに行ってきてくれ。」
「ええ!? 私には、妻がいるので無理です。」
「あなた、すてきです。」
俺は、王様の命令を断った男らしさに、「あの方」のハートはときめいた。
「安心しろ、奥さんの面倒は、私が見ていてあげよう。魔王を退治しに行け!」
「そんな!? おまえ!?」
「あなた!? あなた!?」
王様の兵士に俺と「あの方」は、引き離されてしまった。
「スライムばかり倒してないで、魔王を倒しに行け!」
「うわぁ!?」
俺は、お城の外に投げ捨てられた。
「くそ! さっさと魔王を倒して、ラブラブ生活を取り戻すんだ!」
俺は、冒険の旅に出ること決めた。
「お嬢さんは、16才の女子高生かな。王様と楽しいことをして、遊ぼう。えへへへへ!」
王様のセクハラが始まっていた。
「助けを呼んでも誰も来ないぞ。なんたって、私は王様だかな。えへへへへ!」
王様パワハラも始まった。
「・・・。」
しかし、「あの方」は、微動だにしない。
「おバカですね。」
デビちゃんは、所詮は人間ね、と思っていた。本来なら、異世界ファンタジーでは、王様というのは、絶対的権限であり、王様ゲームというセクハラしたい放題ゲームの名前にもなっている。
「言い残すことはそれだけか?」
「は?」
ついに「あの方」が動き出す。
「ひ、ヒドイは! 私と主人との仲を引き裂こうだなんて、地獄の閻魔さまでもしないわ! あんまりよ!」
「な、何を言っているんだ!?」
「あの方」は、両手に火で魔法陣を描き出す。ノー魔法陣で出せる地獄の炎では無いようだ。
「ダークプリンセスの名において命じる。いでよ! 火の精霊 サラマンダー! お城を燃やし尽くせ!」
「あの方」が召喚魔法をお城の中で、ぶっ放した。
「し、城が燃えている!?」
俺が旅に出ようと自宅を出たら、お城から火の柱が上がっていた。火の粉が城下町にも飛び火している。
「あ、あなた!」
お城に幽閉された「あの方」と、真っ黒焦げのデビちゃんが、走って俺の下にやって来る。
「おまえ!? 無事だったんだね! よかった!」
「あなた! 会いたかったわ!」
俺と「あの方」は、力強く抱きしめあった。
「ゲフー。」
デビちゃんは、体内に溜まった煙を一息吐いた。
「まさか・・・おまえが焼いたのか?」
「ヒドイ! あなた、私を疑っているの!? 私はイフリートしか使えないわ! 私を疑うなんて、あんまりだわ!?」
「冗談だよ!? 俺がお前を疑うはずないじゃないか!? きっと他のヤツがやったに違いない!?」
「魔物よ! 魔物が現れて、サラマンダーを解き放ったのよ!」
「サラマンダー!?」
「王様が言っていた、魔界の入り口を焼き尽くしたモンスターに違いないわ!」
もちろん、犯人は「あの方」である。
「疑ってごめんよ。俺が悪かったよ。」
「いいのよ。あなたが私を信じてくれたのなら。」
「おまえ。」
「あなた。」
俺と「あの方」は、見つめ合って抱きしめ合った。こうして夫婦愛は深まった.
もちろん、2人が結婚式を挙げた教会は、炎に燃えず、奇跡の教会として、民に慕われた。
「ヒヒヒ。」
デビちゃんは、「あの方」の方が、自分よりも悪魔らしいと思いながら、16才の夫婦愛を楽しんでいる、お客様に笑顔で手を振って、この話をまとめた。
つづく。
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