Chapter2-episode7
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泣き疲れてまた眠りについたアリスをベッドに寝かせたあと、ルカは静かに部屋を出た。すると、ドアの前には壁に背を預けたクロムの姿があった。
「あれ?こんなところで何してるの?クロム。」
クロムは呆れ気味に口を開いた。
「それはこっちのセリフだっての……。」
「オレはミネッタに様子見てきてって頼まれてきただけだよ。ここにいたなら入ってくればよかったのに。」
「…………。」
クロムは黙り込んだ後、ため息をついた。
「……ばーか。んな野暮な真似できるかよ。」
「野暮?」
「ああ、誰かが泣いてるのを邪魔するのは野暮ってもんだ。」
彼はそう言ってまた黙り込んだ。廊下を薄暗く照らす電灯が、うるさく明滅しながらその顔に影を落としていた。
『私の帰る場所は、もうどこにもないんでしょう……?』
耳の奥に、まだアリスの声が残っている気がした。目を伏せれば、絶望を知った空っぽの瞳が脳裏に浮かぶ。
それは、かつての自分を見ているようで。
「……気分が悪ぃな……。」
呟いたクロムに、ルカが驚く。
「えっ!?クロムも!?大丈夫!?」
「うるせぇ、騒ぐなっつーの。別に身体の調子が悪いわけじゃねぇよ。」
ルカの片編み込みをぐっと引っ張って黙らせたクロムは、がしがしと頭をかいた。
(あー……どうするか……)
彼には、先ほどから考えては打ち消していることがあった。だが、これはアリスのことを考えればあまり得策ではない。しかし、現状を考えれば、彼が考えていることが唯一の道であることは明白だった。
迷った末に、クロムは口を開いた。
「……ルカ。」
長年の相棒は、首をかしげた。クロムはその澄んだ瞳を見つめながら言った。
「ちょいと考えてることがあるんだが、聞いちゃくれねぇか?」
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