クリスマスパーティー
12月に入った。いよいよ冬の季節本番。そして、聖なる日でもあるクリスマスが間近に迫っていた。今年は一体どんな風に過ごそうかと思っていたそんなある日。
「クリスマスパーティーですか……」
平日のバイト終わり。イスに座り、優さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、渡された紙に目を通す。
なんでも、今月の24日、つまりクリスマスイブにここ、アポロでクリスマスパーティーを開催するらしい。
「そう。この辺りの自治会が主催しているんだけど、今年はうちの番なんだ。最近、メディアでも取り上げられてる子供食堂って言えば、なんとなく趣旨は伝わるかな」
「ああ、なるほど」
てっきり、若者らが集まるどんちゃん騒ぎのパーティーかと思いきや、そういうことか。
子供食堂って確か、子供でも安心して来られる低価格の食堂ってのが元で色々広まったんだっけ。この紙に書かれている内容を見る限り、子供だけじゃなくてその親も対象みたいだな。今回は子供、50円に大人100円か。
こりゃ、そこら辺に貼り出せば、かなりの人数が来るだろうな。
「自治体から補助金のようなものが出るから、金銭面は大丈夫なんだが、問題は人手なんだ」
「ああ……」
確かに、全員が出たとしても、圧倒的に人手は足らないだろうな……
「そこでお願いなんだが、手伝ってくれるアテがないだろうか?少ないけれど、バイト代は出すつもりだし、なんとか……」
「わかりました。とりあえず、手当たり次第に声をかけてみます」
「ありがとう!助かるよ」
とは言ったものの、おれ、ぼっちだし、頼れるアテ、ほとんどないよね……
とりあえず、遥香は来てくれるとして……
声をかけられるのは、えーと5人か……
少ないな……
全員断わられたらどうしようか……
♦︎
そして、土曜日の昼下がり。
「というわけで協力してほしいんだ……」
街にある有名なファミレスで3人を前に優さんからもらった紙をテーブルの上に出しながら、説明していく。
ていうか、この構図、本当にやめてほしい。
3対1って側から見るとおれが3股してて、その弁解をしている感じに見えて仕方ない。そして、この紙は示談に持ち込む紙に見える。せめて、誰か……うん、遥香がおれの隣に座ればよかったのに。なんで、そっち座っちゃうのよ。
「クリスマスパーティーかー。早いなぁ。もう1年も終わりだねぇ」
「あっという間だったなぁ……」
「来年には受験だねぇ」
「って、おーい、聞いてますか……?」
「ああ、うん。聞いてる聞いてる。まぁ私たちで良かったら協力するわよ」
「うんうん。それより、ここの新作メニューが気になるんだよね」
「あ、私も。頼もっか」
「……」
完全に女子会じゃん……
というか、意外と仲良いのな、この3人。
おれの呼びかけに集まったのは、柳、智花、遥香の3人。まぁいつものメンバーだわな。
そして、あと1人声をかけたのだが、今日は都合が悪いということで、ここには来れなかった。急な話だったし、向こうは部活もあるし、仕方ないと思う。
「で、当日、私達は何すればいいわけ?」
「え、ああ、そうだな……」
いつの間に運ばれていたリゾットを頬張りながら、遥香がそう聞いてきた。
「おれと優さんで料理は作るから、みんなは料理を運んだり、片付けをしたりしてほしいんだ」
「それだけ?サンタ役は誰がやるのよ」
「え、サンタ……?」
「クリスマスって言ったら、やっぱりサンタはいないとねぇ」
遥香の言葉に同調するように柳もそう言ってくる。
「いや、でも別にそういうパーティーではないと思うし……」
優さんからもそんな話は聞いてないしな……
「味気ないわねぇ。ただ、ご飯食べて終わりなんて」
遥香は腑に落ちない感じで店内の窓から外を眺めた。
これはあれだよ。こっちが折れないと引きずるパターンのやつだよ……
「わ、わかったよ……一応聞いてみるよ……」
絶対必要ないと思うが……
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