サンタ役
週末。おれは今日もアポロでバイトをしていた。その途中、ひと段落ついたタイミングでおれは優さんにこの前のことを話してみた。
この前のことというのは、遥香に言われたサンタの件である。
「サンタか。なるほどね。それは確かにいいアイデアだね」
「えええええええ」
おれは驚きのあまり、思わず大きな声で叫んでしまった。
何かあったのかと店内にいた何人かの人がこちらに顔を向けてきたので、おれは失礼しましたと頭を下げた。
「おおお、びっくりした。そんなに驚くようなことかい?」
優さんもおれの様子に苦笑しながら、皿の片付けを進めていく。
「いや、提案しておいてなんですけど、サンタいりますか……?」
「せっかくのクリスマスだからね。それもありかなぁと思うよ?」
「そう……ですか……」
まさかのGOサインが出ちゃったよ。
そして、あれだな。このパターンはおれがサンタをやらねばならぬパターンだよな、多分……
はぁ……なんでサンタなんか……
「しかし、そうなると誰にサンタを頼むかだよね」
しかし、予想外の言葉が優さんの口から出てきた。
「え、おれじゃなくてですか……?」
「はは、君がサンタをやるにはまだ若すぎるよ。やりたいっていうなら別だけどね」
「いえ、やりたくないので助かります」
おれは即答した。
やらない道があるなら、当然そちらを選ぶ。
「はは。そうなると、うーん、まずはあいつに頼んでみるか」
「あいつ?」
「まぁ1人だけうってつけのやつがいるからね。ちょっとやってくれないか、頼んでみるよ」
「は、はぁ……」
誰なんだろう、うってつけのやつって……
結局、優さんはそれが誰なのか教えてくれることはなく、いよいよクリスマス当日を迎えるのだった。
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