番外編〜次からは
「ん、んん……」
遥香は呻き声を上げながら、ゆっくりと目を開けた。
「お、起きたか」
おれは、隣で椅子に座ったまま、声をかけた。
「ここは……」
「施設の中にある救護室だよ」
「え、あ……」
遥香は少し経ってから何があったか思い出したようだった。
「全く。すごい心配したんだからな」
目を離してすぐ溺れてるなんて、夢にも思ってなかったし、むしろ、あの短時間でどうやったら溺れられるのか、そっちの方が気になった。ある意味、それは才能かもしれない。
「あんたがここまで運んでくれたの……?」
「そうしたかったけどな。幸い、監視員の人がすぐに気づいてくれて、担架で運んでくれたよ」
「そう……」
「まさか、あの短時間で溺れるなんてな。泳げないなら泳げないって最初から言ってくれよ」
「ごめん……」
いつかのごとく、しおらしくなった遥香。
うん、まぁ反省しているようだし、今回はもう水に流すか。
「さ、それじゃ、プールに戻るか」
「え……?」
遥香は驚いたように声を上げた。
「せっかく来たんだから、楽しもうぜ。まだ時間はあるし。泳げなくても楽しめるところはいっぱいあるしな」
「そ、そうね……」
遥香はゆっくりとベッドから降りると、おれの後に続き、係の人に頭を下げてから、救護室から出ていった。
その後はスライダーに乗ったり、何故か併設されていた温泉に入ったり、フードコートでごはんを食べたりした。
終始カップルっぽい感じで進んでいったような気がしたが、まぁそんな時もあっていいだろう。遥香もまんざらでも無さそうだったし。
「はぁ、中々楽しかったな」
帰り道、おれは満足感に浸りながら、そう言った。たまにはこういうのもいいかもしれない。
「そうね。最初、プールのチケットを出してきた時は何考えてるのかと思ったけど、結果オーライね」
「それは本当にすまん……」
「ふふ。まぁ次からはもう少しマシなものを期待してるわ」
言いながら、遥香はおれの少し先を歩き出した。
ん、次は……?
それはどういう……
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