番外編〜逃走中

「返事がないな……」


画面を見つめ、そう呟きつつ、携帯をズボンのポケットにしまう。


売店で買ったドリンクとポテトと唐揚げのセットが入った箱を持ちながら、屋外のスペースにやってきたのはいいが、肝心の遥香と穂花から返事がなかった。

それに思ったより売店が混んでいて、かなり時間がかかってしまった。ショーの開演時間も既に過ぎている。ショーは見れなくても別にいいけど、せめて、ドリンクだけでも手渡したいんだけどな……


と、その時、ポケットに入れていた携帯がブーブーと震える。おれは箱を片手に持ち、再び携帯を取り出すと遥香から電話がきていたので、おれは通話ボタンを押す。


「今、どこにいるんだ?」


「それが実はステージにいるのよ……」


「はっ?ステージ?あ、席に座ってるってことか?」


「いや、そうじゃなくて、とにかくステージを見てちょうだい……」


そう言って、遥香との電話は切れた。

一体、どういうことなんだ……?


おれは首を傾げながら、携帯をポケットにしまい、遥香に言われた通り、ショーをやっているステージの方へと向かい、ステージの方へと目を向けてみると。


「なんでいるんだ……?」


つい、そんな言葉が出てしまった。

なんとステージ上に遥香と穂花が立っていたのだ。


「あ、京介君!」


呆気に取られているおれを見ながら、穂花が大きな声でそう叫ぶ。近くに声を拾えるようにマイクがあるのか、ステージ全体に聞こえるような声量になっていた。


「どうやら、ようやく待ち人が来たようですね!」


すると、遥香、穂花の隣に立っているスーツを着たお姉さんがそう言う。見た目的にシャチのトレーナーだろうか。どうやら、おれが来るのを待っていたらしい。待たなくてよかったのに。


「それじゃ、こちらに来てもらいましょうか!」


その声を聞き、ハッと周りを見てみると、おれはいつのまにか、水族館のスタッフに囲まれていた。

1対6かよ……

逃げ切れるか……って、逃げる必要はないか。それにしてもスタッフ多過ぎだろ。

せめて、2人くらいでいいじゃん。なんで逃げ場がないように囲んでるんだよ。しかも、ジリジリ寄ってくるし。寄ってこなくていいから。


おれは少し身構えながら、スタッフに言われるがままにステージの方へと連れられていった。案の定、ショーを見に来てる他のお客さんはおれに目を向けるし、なんかものすごく恥ずかしくなってきてしまう。これから一体、何をやらされるのだろうか。というか、なんで2人はステージの上に居たのか。それがすごく気になる。

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