番外編〜summer vacation〜

夏休みのある日。間も無く、昼の12時になろうかという頃。


「「かわいいー!!」」


目の前でヨチヨチと歩くペンギンを前に、2人揃って大きな声をあげる。

スケジュールによると、今はペンギンが館内を歩き回る散歩の時間らしい。


「はぁ……」


対するおれは1人離れた場所でポールにもたれかかりながら、ため息を吐いていた。


全くなんだって、こんな混んでる日に来るんだ……

貰ったチケットに有効期限はないんだから、もっと空いてる日に来ればいいのに……

現に建物内は大勢の人でひしめき合っていた。家族連れも大勢いるように見える。

まぁ今は夏休みだから、当たり前といえば当たり前である。


「ちょっと、せっかく来たんだから、あんたも楽しみなさいよ」


「ペンギンかわいいよ?!それにすっごいモフモフしてるし!」


いつのまにか目の前に来ていた遥香と穂花がそう言ってくる。


「人混み苦手なんだよ……まぁ後ろから付いていくから気にしないで楽しんでくれ」


「ずっと家に引きこもってるから、そんな体質になるのよ。せっかく、穂花の部活が休みの日を選んで来たっていうのに」


腕を組み、ふんと鼻を鳴らす遥香。


「まぁまぁ2人とも。それより、そろそろ屋外のホールでシャチのショーが始まるみたいだよ」


雰囲気を変えようと穂花がマップを広げながら、腕時計を見ながら、時間を確認する。


「もうそんな時間?じゃあ、そっちに行きましょうか」


「じゃあ、2人は先に行っててくれ。飲み物でも買ってから向かうよ。ここに来てから、2人とも水分取ってないだろ?それにこれから屋外に出るのに、手ぶらじゃまずいだろうし」


「あ、ありがとう。じゃあ、お金……」


肩から下げたポーチから財布を取り出そうとする穂花。


「いいって。それじゃ、席に着いたら連絡してくれ」


そう言って、おれは2人から離れて売店へと向かった。

小腹も空いたから、食べ物も買っておくか。


「意外と気が効くのよね、あいつ……」


「そうだね、なんだかんだで紳士なのかな?」


「もう少し、愛想のある紳士ならもっといいんだけどね」


「ふふ。そうかもね」


「……」


ったく、聞こえてるっての……

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