試食会

水曜日の昼休み。


「狭いわね……」


「仕方ないよ、このベンチに4人も座ってるんだから」


おれはいつものように中庭に来ていたのだが、今日は遥香だけではなく、穂花と柳もここに来ていた。

というのも、昨日の夜、メニュー表にある料理を色々と作っていたら、膨大な量になってしまい、おれと遥香の2人で食べ切れる量ではなかったので、柳と穂花にも協力をお願いした次第なのだ。

しかし、中庭のベンチに4人全員座るのはさすがに無理があったか……

ひしめき合いながら、昼ご飯を食べる事になってしまったな。


「それよりこのリゾット、すごいホカホカなんだけど、どうして?」


すると、容器に入ったリゾットを両手に持ちながら、柳がそう言ってきた。


「ああ、ここに来る前に食堂に置いてあるレンジを借りてきたんだよ」


「そうなんだ。ホカホカだから余計に美味しい気がする……」


言いながら、フタを開けた途端、スプーンにすくったリゾットをガツガツと食べていく柳。

それを横目で見ている遥香。

何を考えているかは容易に想像がつく。


「ちゃんと遥香の分は作ってあるから安心してくれ」


「なっ……!誰が食いしん坊よ!」


誰もそんなこと言ってない。それに自分から暴露してどうする。心の中で突っ込みつつ、穂花に料理の入った器を渡す。


「感想は遠慮なく、頼むな」


「京介君が作ったものがマズイわけないよ」


ふふっと微笑みながら、穂花はフタを開けた。

そして、案の定、それを横目で見る遥香。

全く、どれだけ食いしん坊なんだよ……


「遥香は自分のがあるだろ?」


「そ、そうだけど……まぁいいわ……いただきます」


少し不服というか、不満そうにしながら、遥香は箱をパカっと開けた。

ちなみに、穂花にはご飯とルーを別々の容器に入れたハヤシライス、遥香にはデミグラスソースのオムライスを食べてもらっている。

どれも上手くできたと思う。


「うん!やっぱり美味しい!」


ハヤシライスを一口食べて、穂花が大きく声を上げる。


「そう言ってくれて良かったよ」


「タダでこんな美味しい料理食べられるなんて、本当ラッキーだよ。ありがとうね」


「そ、そこまで言われると照れるって……」


「……」


すると、おれと穂花のやりとりを見ていた遥香が無言で肘で脇腹を小突いてくる。しかも、連続で。


分かったって……

おれは他の2人にバレないように、遥香に目配せした。

仕方ない。後でこっそりジュースでも買って渡すか……

そんなことを思いながら、昼休みは過ぎていった。

そういえば、昼休みをこんな大人数で過ごすのは高校生活で初めてだな……

なんかいいな、これ。

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