自信
月曜日の夕方。
おれは学校が終わると一目散に学校から出、スーパーに食材の買い出しに行った。
そして、家に帰るや否や、台所の前に立ち、優さんからもらったメニュー表を目の届くところに置きつつ、料理を作っていく。
「いい匂いね」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
ソファで携帯をいじりながら、遥香が声をかけてくれる。
付き合い始めてからも帰りは念の為に別々に帰っているが、今日は特別に買い物に付き合ってもらい、一緒に帰ってきた。正直、毎日一緒に帰りたいと思ってしまったのは内緒にしておこう。もし、遥香も同じ気持ちなら最高なんだけどな。
「よし、出来た」
火を止め、出来上がった料理を皿に盛り、遥香がテーブルイスに移動したタイミングで、皿を遥香の前に出す。
「煮込みハンバーグなんて、いつ以来かしら……」
「おれも初めて作ったよ……まぁ、それなりには出来たはずだと思う」
一応、ネットでレシピを見つけて一通り見た後、作り始めたから大丈夫なはず……
いつも作るハンバーグとそこまで大差はなかったし。
「それじゃ、早速いただきます」
遥香はナイフでハンバーグにサクッと切れ目を入れ、それを反対の手に持ったフォークで刺して、口に運ぶ。
「どうだ?」
「う、うん……色々と辛口コメントを言ってやろうかなとか思ってたけど、それを忘れるくらい普通に美味しい……」
言いながら、遥香はどんどんとハンバーグを口に運んでいく。少しの間、見ていたが、その手が止まることはなかった。
「ご飯いる……?」
「うん、めちゃくちゃほしい」
念の為にと思い、炊いておいたご飯を茶碗に盛り、遥香の前に出す。
出してすぐに遥香は茶碗を手に取り、パクパクとご飯を口に含んでいく。
その食べっぷりは見ていて、とても気持ちがいいもので、何よりものすごく嬉しかったし、おれの自信にもつながった。
「あー、美味しかった……」
そして、あっという間に遥香は完食した。
茶碗によそったご飯も一粒残さず、きれいに無くなっている。
「ハンバーグもう一つあるんだけど、食べる……?」
「食べる」
食い気味に遥香は即答で応えたので、おれはクスリと笑いながら、ハンバーグを皿に盛るのだった。
そして、2つ目のハンバーグもあっという間に完食した遥香は椅子に座りながら、うっとりとした顔でおれの事を見ていた。
「ん、どうした?」
「料理できるって男子ってやっぱり良いわよね……しかも、めちゃくちゃ上手いし」
「あ、ありがとう……」
なんだよ、面と向かって褒められると照れるじゃんかよ……
「ああ……それに比べて、あたしの料理のセンスが皆無なのは何故……」
と思ったら、いきなり落ち込み出した。
「ま、まぁ気にすんなって。人間、1つくらい欠点はあるだろうから」
「あああ、欠点って言われたぁ……」
おれの言葉に遥香は余計に落ち込み出した。
額がテーブルに着きそうなくらい垂れ下がっている。
「……」
まずったな……
口を滑らせてしまった……
仕方ない。あの手でいくか。
「じ、実は食後のデザートとして、ケーキを買っておいたんだけど……」
「食べる」
遥香は垂れ下がっていた顔を上げて、活き活きとした顔で、そう言った。
立ち直り早……
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