番外編- another side-

「ふぅ……」


今日もいつも通り学校が終わり、帰宅すると2階に上がり、ベッドの上に腰掛ける。


「ふふ……」


すると、無意識のうちに笑いが込み上げてきてしまう。

それもこれも下のリビングにいる、あいつのせいだ。

今日もいつも通り、授業が終わるとすぐにあっちが先に帰ったと思っていたけれど、途中の道で待っててくれていた。

照れているのか目線を逸らしながら、一緒に帰りたいなと思って待ってた。って、言われた時はあたしもつられて、照れてしまった。でも、それ以上に嬉しかった。

本当は一緒に学校を出て、近くの喫茶店とかに寄って買い食いなんかしたいけど、あたしに彼氏ができたと知ったら、学校中が騒ぐことになると思う。柳とか真っ先に聞いてきそう。有名人は辛いなぁ……なんて、さすがに自惚れが過ぎるかな。


「さてさて……」


そんなことを思いながら、携帯のアプリを起動する。


「あー、やっと遊べる……」


たまらず、そんな言葉が出てしまう。

もう1年近くになるかな。そのアプリをやりだして。

初めは興味本位だったけど、今ではすっかり癒しの時間を提供してくれている。


「やっぱりネコが一番よね……」


画面の奥の方にいる、それはそれはとても可愛らしいマンチカン。適当な場所をタッチするとそこに近寄ってきて、じゃれてくれる。それが愛おしくて可愛らしくてたまらない。バーチャルとは言え、この可愛さはリアルにも負けない。

それにしても、そろそろこの子の名前を変えようかと思う。なんか名前を見るたびに恥ずかしくなる。ある種の願掛けというか、せめてこれくらいは……って思って付けた名前だけど……


だって、ネコの名前が京一なんて……ね。

本当は京介って付けたかったけど、万が一、これをあいつに見られた時に困るからと思い、京一という名前にしてみた。まぁ結局、このアプリの存在がバレる事はなかったし、それにネコの名前が京一ってね。もっとネコらしい名前があると思う。タマとかミケとか。

その内、可愛らしい名前でも付けてあげようかな。


「なぁ、パンケーキ焼いたけど食べるか?」


すると、ドアの向こうからそんな声が聞こえてくる。

パンケーキって女子力高すぎでしょ。家に帰ってきて、台所で何かやってると思ったら、そんなことしてたのね。もしかして、あたしのために焼いてくれたとか……?

そう思うと、胸がキュンとなって嬉しさが込み上げてくる。自分で分かるくらいに顔もニヤついてしまう。


「うん。食べるー!」


あたしはそう返事をした後、携帯をベッドの上に置き、階段を降り、リビングへと向かうのだった。

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