恋人の時間
「しかし、びっくりしたわ……」
「まぁ変なところで勘が働くからね、お父さん」
「勘ってレベルじゃないと思うけどな……」
とんでもない予知夢もあったもんだ……
まぁでも、2人とも祝福してくれてよかったと思う。これで反対されたら確実に今の生活がやりづらくなっていただろうし。
賑やかな晩御飯を終えてから、遥香はおれの部屋にきていた。
「それよりさ……」
「ん?」
「この体勢なんなの……?」
そう。遥香は部屋に入るなり、いきなり背中から抱きついてきたのである。そして、そのままベッドに腰掛けた。これが噂のバックハグというやつか。危うく、ベッドインかと思ったのはここだけの話にしておいてくれ。これでも思春期の男の子なんだもん。
いや、嬉しいんだけど、正直言うとやめてほしい。
ありえないくらい心臓の音がドクンドクン鳴ってるし、めちゃくちゃ身体が熱くなってる。遥香もきっと分かるくらいに。
「何よ、たまには甘えさせてよ……」
言って、コツンと頭を背中に預けてくる遥香。
「……!」
心の底から面と向かって言われなくて良かったとおれは思った。
何故なら、今、おれの顔はありえないくらい真っ赤になっていることだろう。そんな甘えた声なんて今まで聞いたことがない。効果は抜群だ。マジで心臓が止まるかと思った。
こんな時、何が言ってやれば、あるいは言わずとも振り向いて正面から抱きしめてやれば、多少なりとも格好はつくと思うが、生憎、おれにそんなスキルはない。
発展途上というか、そもそもそのスキルが開花するのかさえも怪しいくらいだ。
結局、しばらくの間、おれはそのままの状態で遥香と2人っきりの時間を過ごすのだった。
部屋を出て行く際、遥香の口元が緩んでいたのはおれだけの特権としておこう。
次同じのきたら、おれも抱きしめてみるか……
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