12章
親と子
「はぁ……ようやく帰ってきたな」
「ほんと。少ししか離れてないのになんか懐かしい感じね」
今は夕方の4時過ぎ。
おれ達は2泊3日の修学旅行を終え、先程地元の駅に辿り着いたところだった。
そのまま駅を出てから、2人並んでキャリーバッグを転がしつつ、家までの道を歩く。
わずか10分の道のりだったが、その間、会話はなかった。
しかし、会話がなくても何故か心地よい雰囲気がそこには存在していた。
「あれ?」
そんな中、家の前に着いた時、おれは違和感を覚えた。
何故なら、家の中からなにやら音がするのだ。
今日は平日だから昌樹さん達が帰ってきてはいないはず。
まさか、おれ達が留守の間に空き巣でも入ったんじゃ……
最悪のケースを想像し、おれはごくりと唾を飲み込む。
「はぁ、まさかとは思ったけど……」
一方、何故か呆れた様子でズンズンと玄関の前で歩みを進め、そのままの勢いで玄関のドアを開けようとする遥香。
「って、おい……!」
確認もせずにいきなり何やってんだ……!
おれは慌てて、遥香の後を追い、その手を止めるために掴もうとした。
しかし、わずかに間に合わず、玄関は無情にも開けられてしまう。
ってあれ、開いてる……?
というか、なんで玄関が開いてるんだ?
やっぱり空き巣が……と思ったが、その予想は大きく外れた。
「おかえりー!いやー、はっはっは!こうなるとは思ってたよ!うん!」
玄関を開けると何故かそこには私服姿の昌樹さんがいて、嬉しそうに笑いながら、おれを抱きしめてきた。
え、なんでいるんだ?
っていうか、力強すぎ……
このままじゃ、背骨折れる……
おれは昌樹さんの背中をタップし、理由を聞く前にその力強いハグから解放されるのを待つのしかなかった。
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