一夜明けて
翌日の朝7時30分。ホテルのレストランの前にて。
「はぁ……」
おれは盛大なため息を吐きながら、ある人物が来るのを待っていた。
できれば会いたくない……がそうも言ってられない。彼女のおかげで今のおれ達があるわけだし、その事はきちんと伝えなくてはならない。
「あれ、京介君?」
「え……って、穂花……!」
すると、いつのまにか穂花が目の前に立っていた。考え事をしていたせいで来たことに気づかなかった。
「どうしたの?」
「あ、いや……」
完全に不意打ちだったから、なんて言うか忘れてしまった……
いや、とにかく……!
「ありがとう!」
「え?」
おれは勢いよく頭を下げた。その行動に穂花は少しだけ戸惑っているようだった。
「穂花のおかげでおれは前に進むことができた。だから、その……」
「ふふ……」
すると穂花が突然笑い出した。
「わざわざ、それを言うために私を待ってたの?」
「え、あ、うん……」
「気にしなくていいのに……」
言いながら、穂花は手で目元を拭った。
よく見たら少しだけ目が赤く腫れ上がっている。昨日、思いっきり泣いたのだろう。
その事を想像すると胸が痛くなった。だからこそ、この痛みを忘れないようにしようと
誓った。
「あ、でも一言だけいいかな?」
「え、あ、ああ……」
一体、何を言われるのだろうか。
おれは心の中である種の覚悟を決めた。
「遥香を悲しませたりしたら、許さないからね……?」
耳元で囁くようにそう言ってから穂花はレストランの中へと入っていった。
その言葉におれは少し恐怖を覚えたが、恋に破れたからこその穂花なりの応援であり、それが今の気持ちでもあり、そして願いであることがよくわかったので、おれは穂花、そして遥香を悲しませることは絶対しないと心の中で誓うのだった。
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