分岐点
「よし、それじゃあ行くか」
「「うん!!」」
朝の10時過ぎ。
おれ達はそれぞれ、荷物を背負い、ホテルを出発した。
これから夕方の5時までは自由行動の時間となる。
「まずは渡月橋まで行って、そこから昼ごはんはあそこのうなぎを……で、そこから……」
おれは道を歩きながら、改めて今日の流れをおさらいしていく。
「こういう行事事には積極的なんだね」
「そうみたい。まぁそれが頼もしいんだけどね」
「ん?2人ともなんか言ったか?」
おれは後ろを振り返る。
「いいえ。それより今日は頼んだわよ」
「ああ、任せておけ。最高の修学旅行にしてみせるから」
「随分頼もしいわね。後悔させないでよね?」
「大丈夫だ」
言って、軽く微笑む。
そして遥香もおれの返事に対して、軽く微笑んでくれた。
さて、気合い入れていくか。
こうしておれ達の2日目の修学旅行が始まったのだった。
まずは本日、メインの目的地である渡月橋に向かう。
やはり、有名な観光スポットだから非常に大勢の人で賑わっていた。遊覧船のようなものもあるらしい。
おれ達は周りの景色に感動しながら、思い思いに写真を撮っていく。
その後、少し歩いたところにある鰻屋に入る。
ここの鰻がまぁうまいらしい。その代わり、値段が少々高く、学生としてはあまり手が出しにくいのだが、せっかくの修学旅行なので、奮発して食べてみることにした。
「うまっ……」
鰻を口に運んだ瞬間、おれはたまらず、目を見開いてしまった。
口の中で溶けたぞ……
こんな鰻がこの世にあったのか……
「確かにこれは……」
「うん……美味しい……」
隣に座る遥香、穂花も鰻に舌鼓を打つ。
どうやら、ここに来て正解だったようだ。
しかし、本当うまいな、これ……
その後、鰻屋で大満足したおれ達は、有名なオルゴール店に行ったり、目に入った店で買い食いをしたりしながら、楽しいひとときを過ごしていった。
修学旅行に来て良かったと心の底から思えた。
だが、この楽しいひとときの間も2人がそれぞれ思い詰めていることにおれはまだ気づいていなかった。
いや、もしかしたら気づかないことにしたかったのかもしれない。
楽しい時間というのはいつかは終わりが来るものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます