火照り
「ん……」
ピピ、ピピと事前に設定しておいた部屋のモーニングコールが鳴り響く。
モーニングコールが鳴ったということは今は朝の7時か……
「ふぁあ……」
盛大に欠伸をしながら、おれはベッドから上半身を起こし、枕のそばにあるモーニングコールを止める。
昨日はベッドに入ってからも中々寝付けず、結局日付が変わる頃まで起きていた。
おかげで少し寝不足だ。
しかし、そうは言ってられない。
今日のために色々と下調べと準備を進めてきたんだ。必ず高校生活最高の思い出を作ってやる。
「さて……」
心の中で意気込みながら、ベッドから下り、洗面台へ向かい、顔をバシャバシャと洗う。
そして、素早くジャージに着替えるとベットの上に腰掛け、部屋のテレビをつける。
そして、ぼーっと眺めつつ、時間が過ぎるのを待つ。
朝は食事の量を控えめにしないとな。
自由行動の時に色々と買い食いする予定だし、胃のキャパをしっかりコントロールしておかないと。
そんなことを考えているうちに7時40分となり、おれは部屋を出た。
そしてエレベーターに乗ろうと思ったのだが、一般客もいるので既にエレベーターは満員だった。
仕方なく、おれは階段を使い、2階のレストランまで降りる。
全く、朝からいい運動だな……
心の中で愚痴りつつ、レストランへと入り、適当なテーブルを見つけ、そこに座る。
すると間髪入れず、空いているイスに遥香と穂花が座った。
手には既にいくつかの料理が盛られている皿があった。
「遅い」
少しだけイラっとした様子の遥香。
「わ、悪い……エレベーターが満員で仕方なく、階段で降りてきたんだよ……」
「それは言い訳かしら?」
少しだけ口元を上に釣り上げた遥香がそう言う。
今日は朝から悪女キャラ登場ですか。
それもお似合いですこと。
「まぁいいわ。それより早く食べましょ」
「あ、ああ、そうだな…….」
言って、おれは席から立ち上がり、料理を取りに向かった。
その途中、後から来た穂花がこそっと耳元で囁いた。
「遥香、京介君に早く会いたかったんだよ、きっと」
「は、はぁ……?そんなことないだろ」
なんだよ、その初々しいカップルみたいな現象は。ありえん、遥香に限ってそれはないだろ。
「ふふ、まぁ私もだけどね」
言って、穂花は足早にドリンクバーの方に行ってしまった。
「……」
対するおれは何も考えられなくなってしまい、皿を持ったまま、料理が乗ってる皿の前で突っ立っていた。
顔が、なんか熱い……
多分、側から見てもおれの顔はすごく赤くなっていることだろう。
その火照りが冷めるのにかなり時間がかかり、結局、おれはほとんど朝食を食べることができなかった。
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