ぎこちない2人

「はぁ、なんとか助かったな……」


ロビーにあるソファにどかっと座りながら、たまらず、ため息を吐く。

遥香が担任に事情というか、誤解を解いてくれたのは良かったのだが、また誰かに見られて誤解を招くのはマズイと思い、部屋を出て、ここに来た次第である。


「タイミング悪くてごめん……」


隣でしゅんと落ち込んだ様子の遥香。

こういう姿、あんまり見たことないからなんか新鮮な感じだな。


「いや、おかげで助かったから結果オーライってところだよ。にしても、2人とも部屋に来るなんて思ってなかったよ」


「「……」」


おれがそう言うと、遥香と穂花は顔を見合わせ、そのまま気まずそうに俯きながら、黙り込んでしまった。


あれ……

おれなんか変な事言ったかな……

でも、この様子を見る限り、2人とも互いに内緒で部屋まで来たってことだよな。

なんでわざわざそんなことしたんだろう。

どうせなら2人揃って部屋に来ればよかったのに。

まぁ2人同時に来たところを見られるのもマズイ感じはするが……


「まぁとりあえず、3人揃ったんだがら、明日のスケジュールの確認をしたいんだが、いいか?」


言って、ジャージの上ポケットに入れていた携帯を取り出し、メモ帳を起動させる。


「え、ええ……あたしはいいけど……」


「わ、私も大丈夫……」


それぞれぎこちない感じだが、返事をする。


「よし。じゃあまず明日はここに行ってから、こう周って……」


こうして、おれ達は就寝時間ギリギリまでロビーで明日のスケジュールの確認を行った。

だが、その間、遥香と穂花が2人だけで喋ることはなかったのだった。

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