背中からざっくりと。
「新幹線とか久しぶりだなー」
「オレなんて初めてだよ」
「まじか?さすがにそれはありえないだろ」
そんな声が周りから聞こえてくる。
「何ぼーっとしてんの?」
「あ、いや、なんでもない」
「ねぇねぇ、2人ともこれ食べる?」
隣に座る穂花がおれ達にお菓子の袋を差し出してきた。
「あ、私これ好きなの。もらうね」
そう言って、遥香はお菓子の袋に手を伸ばした。
「どうぞ、どうぞー」
快く応える穂花。
そんな中、おれは心の中で安堵していた。
新幹線の座席はなんと3人席だったのだ。
その事がわかった瞬間、ぼっちのおれが唯一生き残る座席であったので、本当に心の底から安堵の息が出たものだ。
しかし、一つだけ疑問点があった。
それは何故かおれが真ん中の席で両サイドに女子がいることだ。
正確には進行方向に対して、おれの左が穂花、右が遥香である。
両手に花とはまさにこのこと……って呑気に思えたらどれほど良かったか。
近くにいる男子からは殺気に満ちた目を向けられ、通りがかる男子からもこれまた殺気に満ちた目を向けられ、新幹線を降りた瞬間、背中から刺されるんじゃないかと思わざるを得ない空気になっている。
それも当たり前のことだと思う。
クラスでトップ1.2と言える女子2人に挟まれているのだから。
そんな2人と班が同じなんて今更だが、浮き世離れした出来事だと思う。
「ねぇねぇ、2人ともこれやらない?」
おれがそんな事を考えていると、穂花がキャリーバッグのサイドポケットからゴソゴソと何かを取り出した。
ちなみにおれと遥香はキャリーバッグを持ち上げられる重さだったので、上の棚に置いたが、穂花は重くてとても持ち上げることができず、座席の近くに置いている。
「それってトランプ?」
遥香は穂花が手に持っているものを見て、そう言う。
「うん、やっぱり旅行にはトランプは必須でしょ」
言って、穂花はトランプを軽快にきっていく。
「トランプなんて、いつ振りだろうな」
おそらく小学校振りなのは間違いない。
何故ならおれは中学生からずっとぼっちで……って今更、こんなこと言わなくてももう分かるよな。
「最初は何からやる?」
「そこはやっぱり大富豪でしょ」
すると、やけに気合の入っている遥香がそう言った。
そういや、遥香ってこういう勝負事って妙に負けず嫌いだっけ。
「じゃあ大富豪にしよっか」
そして新幹線の前の座席に付いている台をそれぞれ手前に降ろした後、穂花がトランプのカードを順番に配っていった。
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