カラータイマーは鳴らない

「あ、きたきた!おーい!」


集合場所の駅に着いた時、遠くの方で穂花が手を振っているのが見えたので、おれ達はそこに向かって歩いていく。


「いよいよだね」


「ああ、楽しい修学旅行にしような」


「うん。もちろん。って、2人とも一緒なんだね?」


その質問をされた時、おれの心臓がドクンと脈打った。おそらく、遥香も同じようになっているだろう。確かに2人一緒に来るのは不自然だよな……

完全に忘れてたわ……


「あ、ああ。最寄り駅でたまたま会ってな。それで一緒に来たんだ」


「ふーん……そうなんだ……」


やけに含みのある返事をする穂花。

やばい。確実に怪しんでいるぞ、これは。

このままじゃ、修学旅行開始前に変な空気になってしまう……


「それにしても穂花、バッグなんかでかくない?」


するとこの空気を変えようとしたのか、遥香が穂花が持っているキャリーバッグを指差しながら、そう言った。


ナイス、遥香。

おれは心の中でぐっと拳を握る。


「え?ああ、うん……持っていきたいもの、全部入れてたら、こんなに大きくなっちゃって……」


恥ずかしくなったのか、穂花は目線を逸らしながら、頬をかく。


確かにデカイな。

おれと遥香のキャリーバッグが単身用の小型に対して、穂花はその1.5倍くらいあるキャリーバッグを持っていた。

中身が何なのか、少し気になるが、無理に詮索するのも野暮だよな。


「それじゃ、そろそろ点呼を取るぞ!」


とその時、時間になったのか、前方付近にいた学年主任の先生が大きな声を上げた。


その声に反応し、ざわざわとクラスごとに集まり、それぞれのクラスの担任がバインダーを持ちながら、点呼を行う。

そして、程なくして、点呼も終わり、学年主任から改めて修学旅行中の注意事項を説明された後、担任から新幹線のチケットが渡され、続々とホームに上がっていく。


さて、いよいよだな。

おれは心の中でワクワクしながら、エスカレーターを上がっていく。


あ、忘れてたけど新幹線って2人席だっけ……?

やばい。相手が遥香と穂花以外なら絶対に気まずいやつじゃん。

これから2時間半、どうしよ……

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