11章
ぼっちの修学旅行
長かったはずの夏休みもあっという間に終わり、9月に入った。またぼっちの学校生活が幕を開ける。
おれは親父からの誘いである海外移住の件については、未だに返事が出せていない状況であった。
「えー、それでは今から修学旅行の班決めをしたいと思う」
そんな中、夏休み明け2日目のホームルームにて担任がそう言うとクラス中が一斉に湧き上がった。おれを除いて。
「……」
やばい、親父の話をずっと考えていたから完全に忘れていた。そうだ、来月には高校生活最大のイベントである修学旅行があるじゃないか……
おれは頭を抱えながら、机に突っ伏した。
中学の時のあの悪夢が呼び起こされる……
また仮病で休むことになるのか……
しかし、例え修学旅行に行ったとして、ぼっちのおれが楽しく過ごせるとは思えないし……
最悪だ。どっちに転んでもバッドエンドしかない。おれは目の前が真っ暗になりそうだった。机に突っ伏しているんだから、当たり前だとかいう現実的な話は聞きたくない。
しかし、そんなおれを神は見捨てなかった。
「ただ、毎年ニュース等で修学旅行生の素行が問題視されているため、班の人数は少数の3人とさせてもらう。大勢だと気も大きくなって、大事になったりするからな。班の編成は男女問わずだから、それじゃ今から話し合って決めてくれ」
その言葉にクラス中からヤジが飛びながらも、ザワザワと騒ぎ出す。
3人……
おれは真っ先に遥香と穂花を見た。この際、班に女子しかいない状況はどうでもいい。重要なのはおれが修学旅行に行けるかどうかなんだ。
すると、おれの願いが通じたのか、はたまた偶然なのかはわからないが、同じタイミングで遥香、穂花と視線が交差した。
流石というか、クラスの人気者だけあって2人とも周りから声をかけられているが、様子を見るからにどうやら、それらを断っているようだ。
神……
今夜は奮発してすき焼きでも作ろうかな。
とりあえず、2人に後でジュースでも奢ることにしよう。
おれは机の下で周りから見えないように、グッと握り拳を作りつつ、ホームルームが過ぎ去るのを待つのだった。
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