綺麗。きれい。

陽もようやく落ちてきて、辺りがゆっくりと暗くなってきた頃。

おれと遥香は河川敷の端でレジャーシートに座って、花火が打ち上がるのを待っていた。


ちなみに、このレジャーシートは遥香が持っていたものだった。

そして、レジャーシートに描かれているのは、あのブチャカワ猫だ。寝転びながら、球遊びする姿が描かれている。

新作が出たとかで、たまたま遥香が今日これを購入したらしく、早速使わせてもらっているのである。いやはや、なんともタイミングが良くて、びっくりする。むしろ、今日の花火大会のために買ったんじゃないかと思ってしまうが、そんなわけないよな。


「それにしても多いな」


言いながら、辺りをぐるっと見渡す。


「うん?人がってこと?」


「いや、リア充がだよ」


おれ達がいる周りには何故かカップルしかいなかった。

同じようにレジャーシートを轢いて座っていたり、そのまま地面に座っているカップル達もいる。どこもかしこも幸せそうな、甘ったるいオーラが出ている気がする。長時間いたら胸焼けがしてきそうだな。


「あー……そういえばそうね」


「まぁそれは別にいいんだけどさ。人目を気にせずイチャイチャとかされたら困るよな」


いきなりそんなことされたら、どこ見ていいかわからんし。っていうかその前に人前でそんなことやるなって思う。


「イチャイチャ……」


「おい、遥香どうした……?」


「え……いや、なんでもないわよ……!」


そう言って、遥香はそっぽを向き、それきり黙り込んでしまった。


なんだってんだ、一体……

そういや、遥香ってモテるのに何故か今まで彼氏いないんだよな。なんでなんだろ……

意外にそういうことにはウブとか……?

いや、それはないと思うけどな……


遥香をよそに、おれがそんなことを考えているうちに、遠くの方で花火が打ち上がった。

花火が上がった瞬間、大きな歓声が上がる。


「わぁ、綺麗……」


隣に座っている遥香が小さく呟く。

子供のように目を輝かせながら、打ち上がっていく花火に目を合わせていく。

その横顔の方が花火なんかより何十倍も綺麗だとおれは思った。

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