未知との遭遇
「はぁ……」
時刻は昼の3時半。
おれは溜息を吐きながら、映画館を出た。
ものすごく期待してたのに、内容が内容だけになんか拍子抜けしてしまった。
いや、確かに面白かったんだ。さすが海外の映画というだけあってリアルな映像に大迫力のCG。
しかし、内容がよくわからなかった。というか意味がわからなかった。
金にものを言わせるではないが、そういった部分が見えてしまっていた。だって、主人公が街中で敵の組織と闘ってたらいきなりエイリアンが現れて、やばい、殺される。って時に古代の魔法使いが助けに現れるんだぞ?
もはや疑問しか浮かばないだろ、この展開。
CMは上手く作られているんだな……と実感してしまった。
どこかスッキリとしない頭のまま、エスカレーターを降りる。
さすが夏休みというだけあってショッピングモールは大勢の人で賑わっていた。
ここに長居する必要もないし、さっさと帰るか。
って、もしかしたら、もう遥香が帰っているかもしれないな……
出かけてるって伝えるの忘れてたから、家に帰って昼ご飯なくて怒ってるかも……
しかし、携帯にメールは来ていない。
まぁでも万が一のことを考えて、なんか買って帰るか。
と、その時、ちょうどいい店がおれの視界に入ってきた。
それは以前、木ノ下と入ったことのあるブチャカワ猫の店だった。
猫好きの遥香ならここのグッズを買っておけばなんとかなるだろ。
少し安易かもしれないが、効果は抜群なはずだ。しかし、人気の店なのか中々の人だな……
おれは賑わっている店内へ人混みを掻き分けながら、進み、新作と書かれたグッズのいくつかを手に取り、レジ待ちの列へ並ぶ。
そして、すぐに会計へと案内されたのだが。
「いらっしゃいませ、こちらプレゼントで……すか……」
「何やってんの、お前……?」
たまらず、そんな一言が出てしまう。
何故なら、なんとレジの店員は遥香だったのだ。
◆
ショッピングモールの2階にあるフードコートでそれぞれ食べたいものを注文し、席に着く。といっても2人とも、同じ店でハンバーガーとポテト、ドリンクのセットを頼んでいた。
「いや、まさかあんなとこで会うとはな」
「それはこっちのセリフよ。あんたが来るなんて思ってもみなかったし……」
はぁと溜息を一つ吐きながら、おれの向かい側に座っている遥香はジュースの入ったカップのストローに口をつける。
「なんだって、あそこでバイトなんかしてるんだ?」
小遣いに困っていたというわけではなさそうだし。家を空けることが多いからと昌樹さんと京香さんからは十分なほど小遣いは貰っているはずだ。
「いやまぁその……釣られてというか……」
ジュースを一口飲んだ後、視線を外しながら、言いづらそうに遥香は小さく口を開いた。
「釣られて……」
一体どういう意味なんだ……と思ったが、すぐにそれは解決した。
「なるほど、グッズ目当てか」
「正解……」
従業員ならよくある特典だと思うが、割引で商品が購入できるというやつだ。
それに釣られて遥香はあそこの店でバイトをしていたのだろう。それに働いていれば新商品の情報も入ってくるだろうし、購入することも簡単だ。それだけあのブチャカワ猫が好きってことか。中々の熱意だな。
「この事は昌樹さん達は知ってるのか?」
「うん。履歴書書くことに言ったから、知ってる」
「そっか」
この様子なら反対はされなかったってところか。まぁ遥香なら反対されても働いてるだろうな。そういう奴だし。
「それより、あんたが1人でここに来るなんて随分珍しいわね」
「ん?ああ。観たい映画があってさ、それで観てきたとこなんだよ」
「へぇー。何観てきたの?」
「これだよ」
そう言って、映画館の入り口に置いてあったパンフレットを遥香に見せる。
「ああ、これね。私も少し気になってたんだけど、どうだった?」
「設定を盛り込みすぎて映画が崩壊する良い例を見たって感じだったわ」
「あ、そうなのね」
遥香は苦笑しながらポテトを摘んだ。
「それより、もうバイトは終わりなのか?」
「うん。ちょうど上がるところだったから」
「そっか。なら一緒に帰るか」
「……そ、そうね」
そう返事をした遥香の顔が少しだけ赤くなった気がしたが、おれは特に気に留めなかった。
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