それぞれのキモチ

勉強を始めてから10分ほど経過した頃。

穂花は机に座り、ノートと教科書を広げ、おれはその後ろで立ちながら、手に教科書を持っている。

なんかこの構図って新鮮だな……

ちょっと優越感あるかも。って、変な意味じゃないからな。勘違いしないでほしい。


「この問いの意味はこういうとこだから、この公式を使えば……」


「あ、なるほど!うん、わかった!」


穂花はサラサラと答えをノートに書いていく。

うん、正解。どうやら、ちゃんと分かってきたみたいだな。というか穂花に近づくたびにシャンプーのいい香りがおれの鼻を刺激して、ドキドキしてしまう。全く末恐ろしい女の子だ。女子ってみんな、こうなの?


「やっぱり、2人同時に教えられるより1人の方がいいよ」


穂花は苦笑しながら、そう言った。


「やっぱりそうだよな」


おれも苦笑しつつ、そう返した。


「それに遥香の教えてくれるのって全部独学というか自分で思いついたやつだから、イマイチよくわかんなくて」


「やっぱりそう思うよな?おれもよくわかんないもん。天才って多分ああいうやつのことを言うんだろうな」


遥香は何をやらせてもすごいからな。

運動神経も良くて、勉強もできて、おまけにクラス……いや学校一の有名人で。

そんな奴が身近にいるとはな。しかも、同じ家で暮らしているなんて。


「天才か……勉強は負けてると思うけど、でも……」


「ん?何か言ったか?」


「え?い、いや別に!さ、次の問題解こうかな!」


不自然なくらいにやたら張り切り出した穂花。

どうしたんだ、一体。まぁやる気を出してくれるのは良いことだけど。


おれは首を傾げながらも勉強を続行するのだった。

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