手がワキワキ

門川家から徒歩で15分ほどのところに穂花が住むマンションがあった。


意外と近いところに住んでたんだな。


そんなことを思いながら、マンションの入口で穂花に教えられた部屋番号を押す。


「あ、今開けるね!」


数秒コールしたのち、何やら急いでいたのか慌てたような声が聞こえてき、ほぼ同時にオートロックのドアが開いた。


そしてエレベーターに乗り、8Fで降り、玄関の前でチャイムを鳴らす。

チャイムを鳴らしてすぐ玄関のドアが開き、穂花が出てきたのだが。


「これから1週間よろしくね!さ、入って入って!


勢いよく玄関から出てきた穂花はお風呂に入っていたのか、ほんのり濡れた髪で、石鹸の良い香りがおれの鼻を襲ってきた。

その上、部屋着なのか、Tシャツに短パンを着ており、穂花のスタイルの良さを前面に押し出していた。


「あ、ああ、こちらこそよろしく……」


まともに穂花を見ることができず、おれは俯きながら返した。

やばい、破壊力抜群すぎだろ……!

なんか、さっきから胸がバクバクしてて、心拍数すごい上がってる……

その上、これから2人きりになるんだろ……

大丈夫かな、おれ……いや、心臓か……


「お、お邪魔します……」


穂花に促され、ゆっくりと靴を脱ぎ、家の中へと入り、そのまま部屋へと招き入れられる。

部屋は6畳程の広さで窓側にベッドと机があり、真ん中にテーブル、その上に小さなテレビが置いてある。

部屋自体は非常にシンプルで清潔さが行き届いており、ベッドの上に犬や猫のぬいぐるみがいくつかあって、それを穂花が抱きしめたりしているのかなと思うと、少し微笑ましく思えた。


「あ、あんまりじろじろ見ないでよ……」


おれが部屋の入口に立っていると、部屋の中にいた穂花が恥ずかしそうに小さくそう言った。


「あ、悪い……その女子の部屋に入るなんて中々ないからさ……」


そういえば、遥香の部屋に入る時はこんな風に緊張しなかったっけ……なんでだろ。

昔から何度も入ってたから慣れてたのかな。


「これから毎日来てもらうんだから、慣れてよね……?」


すっと側によってきたかと思うと破壊力抜群の上目遣いでそんなことを言ってくる穂花。

やばい、なんですか。この子。思いっきり抱きしめていいですか。かわい過ぎるだろ。

おれは無意識に動きそうになった両手を必死に抑えながら、その場で深呼吸を繰り返した。


「ん?どうしたの?」


おれの様子を不自然に思った穂花が首をかしげる。


「あ、いや、なんでもない。それより早く始めようか。時間も限られてるし」


至って冷静に返す。

危ない、危ない。もう少しで取り返しのつかないことをするところだった。

しかし、先程のことで穂花のかわいさを改めて理解した。そんな子に告白されているとはつくづく幸せなんだと思う。まぁずっと返事を待たせているのは本当に申し訳ないけど……


「あ、うん。そうだね。よろしくお願いします」


こうしておれと穂花の勉強会はスタートした。

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