エマージェンシー
時刻は午後の2時20分。
おれ達は満足感に浸りながら、お店を出た。
「さて、これからどうする?」
まだ時間もあるし、どこかぶらつくのもアリだよな。
まぁ人混みすごいから、あんまりのんびりはできなさそうだが。
「あ、ごめん……出来れば、早めに記事を仕上げたいから今日はその……」
申し訳なさそうに木ノ下は言い淀む。
「ああ、そういうことなら大丈夫。それじゃ駅まで送るよ」
「あ、いや、ううん。ここで大丈夫だよ。ありがとうね」
「そうか?それじゃあ、またな」
「うん。また誘うからその時はお願いね」
ふふっと笑ってから、木ノ下は踵を返して、歩き出した。
「……」
しばし、木ノ下を見送った後、その場で考える。
さて、ここでやることも特にないし、おれも帰るとするか。
今帰ったら遥香、家にいるかな……
なんか悪いことしちゃった気がするから、何か買って帰るか……
というわけで、おれは先程出たばかりのお店に再び入り、適当なケーキをいくつか注文してから、ショッピングモールを出た。
そして、30分ほど道を歩き、家へとたどり着く。
「ただいまー」
玄関のドアを開け、靴を脱ぎながら、声を上げる。
しかし、中から返事はなかった。
あれ、出かけてるのか?
昨日と同じような感覚を覚え、少し拍子抜けしながら、リビングへ入るドアを開ける。
「ふふ……」
そこには怪しい笑みを浮かべながら、何かを作っている遥香がいた。
鍋の中のものをかき回しているのか、手が円状に動いていた。
やばい。
おれは瞬時にドアを閉めた。
これは見てはいけないものを見てしまった。
何を作ってるのかわからないが、とにかくやばい。さっきから、エマージェンシーコール鳴りっぱなしだ。
なんか紫色の見たことない湯気出てたし。
さつまいもでも丸ごと鍋に入れたのかな。うん、きっとそうだ。それで出汁でも取ってるんだ。そんな料理聞いたことないけど、世界は広いからどこかの国にあったとしても、不思議じゃないよな。
おれは先程見た光景を心の奥にしまいながら、そそくさと部屋へと逃げた。
しかし、後日遥香から身体に良いとその時見た紫色と同じ色をした小瓶に入った妙な液体を渡された。
とりあえず、ありがとう。と言って、受け取った後、あまりに怖すぎて速攻でビニール袋に入れ、テープでぐるぐる巻きにした後、机の奥にこっそりと閉まった。いつかこれを何とかしなくては……
そのうち、何かの拍子で気化して、変なガスが漏れ出してパンデミックが起きなきゃいいんだけど……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます