整理
とぼとぼと道を歩き、ようやく家に辿り着く。
ゆっくりと歩いていたから体感だが、普段の倍くらいの時間をかけて帰ってきた気がする。
おれはズボンのポケットからカギを取り出し、玄関のドアを開けた。
「ただいま……」
玄関に入ると同時にそう小さく呟くが、中からは誰からの返事もない。
あれ、2人ともいないのか?
てっきり昌樹さんと京香さんがいると思っていたので、少し拍子抜けしてしまう。
おれは無造作に靴を脱ぐと、リビングのドアを開けた。
そこには誰もおらず、代わりにテーブルに書き置きがあった。
そこには乱雑な字で「やけ酒をしてきます」と書いてあった。
これ、原因、おれだよな……?
やけ酒するレベルでおれとデートしたかったってことなのか……?
たまらず、頬が引きつってしまう。
まぁあまり深く考えないようにしよう……
おれはソファに座った後、チラッとリビングにかかってある時計に目をやると昼の2時半過ぎだった。
もう昼過ぎか。
なんか食べるかな……
でも作る気しないしな。
あ、確か、前にカップ麺を非常用にと買っておいたはずだから、それを食べよう。まぁ食べられてなきゃいいけど。
おれはソファから立ち上がると、台所にある棚を開ける。
「あ、あったあった。よかった」
そこには買い置きしていたカップ麺があり、おれは一安心しながら、それを取り出し、お湯を沸かす。
そして、ものの数分でお湯が沸き上がり、それをカップ麺の中に注ぎ、蓋をする。
おれはカップ麺が出来上がるのを待ちながら、テーブルイスに座り、先程の出来事を思い出す。
いや、正確には木ノ下のあの表情を思い出していた。
木ノ下は嫌いだ。だから、嫌いなやつの悲しい表情なんて見たところでなんともないと思っていた。
だが、全然違った。
その表情を見た時、胸が……いや心が辛くなった。見たくなかったとさえ、思ってしまった。何故、そんなことを思ったのか自分でもわからないけど……
「はぁ……」
気持ちの整理がつかなくて、おれが盛大にため息を吐いたと同時にリビングへ入るドアが開いた。
「何、あたしが帰ってきたからため息吐いたの?」
リビングへ入ってきたのは少しだけ不機嫌そうな表情をした遥香だった。
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