小悪魔
「はぁ、全く……無駄に嫌な汗かいたわ」
女の子とその母親と別れてから、おれ達は館内を適当に歩きながら、先ほどのことに話を戻す。
「悪かったって。それにあんまり過去のことをうじうじ言う男は嫌われるわよ?」
「嫌われるって誰にだよ?」
「あ……」
「おい、そういえば、あんた、ぼっちだったわね。って感じの哀れみの目でこっちを見るのやめてくれませんかね?」
泣きそうになるわ。それに何回も言うけど、好きでぼっちなわけじゃないっての。
「ん?ぼっちってなんのこと?」
しかし、穂花には聞き慣れない言葉だったようでイマイチ理解ができていないようで、首を傾げている。
「ああ、うん。何でもないから。大丈夫。それにそのうちわかるから……」
遥香がそう言いながら、ドス黒い笑みでこちらを見てきた。
悪魔か、あいつ。むしろ、魔王だな。
夜中になったら、背中に羽生えて、街を徘徊してそうだな。ってあれ、なんでだ?
何度想像しても小悪魔にしか想像できない。しかも、それがやたら似合っている。って何考えてんだ、おれ。
「それにしても良いものもらったわね」
遥香はもらったチケットを取り出し、それを眺める。
「うんうん!これも京介君のおかげだね!」
満面の笑みでおれに向かって微笑んでくる穂花。
相変わらず眩しい笑顔だ。その顔見てるだけでこっちも幸せな気分になってくる。
「そうね、今回は感謝すべきかも……」
そこまで言ったところでカバンに入れていた遥香の携帯が鳴った。鳴り方からして電話のようだ。
「ん?お母さん?」
どうやら、電話をかけてきたのは京香さんからのようだ。普段、あまり電話をかけてくる人ではないので遥香は不思議に思いながら、電話に出た。というか、今は仕事中のはずじゃ?
まぁ昼時だし、もしかしたら休憩中なのかも。
「どうしたの?お母さん。え?うんうん……はい……?」
電話口の京香さんからの話を聞いていた遥香は驚いたような、信じられないといった様子でゆっくりと携帯から耳から離した。
「おい、どうした?」
「う、うん……それがね……」
そこで遥香の口から発せられたのはなんとも意外な、そして想像もしていない言葉だった。
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