それでも僕はやってない
「だからまぁその、勢いでドリンク上げたのは確かに良くなかったと思うけど、でも仕方なかったというか……」
ものの5分ほどで状況説明は終わった。が、この絵面はどう考えても悪すぎる。
容疑者、おれ(それでも僕はやってない状態)
被害者、女の子(ドリンクに夢中)
警察官、遥香(手錠どころかピストルを握っている。今にも発砲しそうだ)
傍観者、穂花(美少女)とその他モブ。
しかし、この場に女の子の親御さんがいなくて良かった。
もしいたら大変なことに……
「あ、お母さーーん!」
そんなことを思っていると女の子がドリンクから口を離し、勢いよく座っていたベンチから立ち上がり、遠くの方に向かって手を振る。
HAHAHA!
神様はとことんおれが嫌いらしい。
こんな状況で親御さんが来てみろ。
おれは明日新聞に載ることだろう。
未成年だから実名は出ないだろうが、立派な変態犯罪者のレッテルが貼られることだろう。やばい、もう絶望しかないじゃないか。
目の前が一気に真っ暗になり、おれが頭を抱えているとポンと誰かが肩に手を置いた。
「わかってるわよ、あんたがそんな人間じゃないって。というか、最初から冗談のつもりだったし……」
「あの、冗談にしてはやりすぎだわ……」
悪態をつきながら、おれは顔を上げた。
おれの目の前には穂花と遥香が。遥香は悪い悪いといった様子で苦笑いを浮かべていた。
まぁおれも安易な行動は慎むべきだったな……
おかげでいい教訓になったわ……
その後、女の子は無事、母親と再会。
そして女の子がドリンクを飲んでいたので、その訳を説明すると母親がドリンク代を払うと言ってきたので、それは3人がかりで全力で断った。善意でやったことなので、どうも気が引けたのだ。
すると、せめてもの気持ちとのことでおれと遥香と穂花、3人にチケットをくれた。
それは近くにある水族館のチケットだった。
なんと女の子の親御さんが水族館のスタッフらしくて、それの優待券だった。
おれとしてはそれを貰うのも悪いと思ったが、これを貰わないと話が進まなそうだったので受け取ることにした。
水族館か……
おれはチケットを見つめる。
随分長い間行ってないな。
まぁ行ったところでリア充ばっかだしな。
というか、カップルで水族館に行って何が楽しいんだ?
どうせ、ペンギンとか見て「かわいいー!」とか言ってる私かわいいでしょ。アピールするだけだろ?全く、これだからリア充は。
はぁ……
「また変なこと考えてる……」
隣にいる遥香が小さな声で何か言ったようだが、気にしないようにした。
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