なんで知ってんの

夕方の4時過ぎ。

家に帰ってきたおれは部屋で着替えたあと、リビングで今朝、コンビニで買ったパンを頬張っていた。

元々、昼食用に買っていたのだが、穂花が弁当を作ってきてくれたので、食べる必要がなかったのだ。


それにしても、穂花の手作り弁当はかなり美味しかった。思わず、夢中で食べてしまったくらいだった。

正直、これが毎日食べれたら相当幸せだろうなと思った。

穂花は明日も作って来ようかと言ってくれたが、さすがにそれは悪いと断った。

しかし、もし穂花と付き合ったら毎日作ってきてくれるのだろうか……


「はぁ、疲れた……」


おれが昼休みの出来事を思い出していると、いつのまにか帰宅していた遥香がため息を吐きながら、リビングに入ってきた。


「お疲れ。なぁ、これ食べないか?」


そう言って、おれはクリームパンを一つ遥香に見せた。


「あ、うん。小腹すいてるからもらおうかな。それより、あんた、今日の昼休み、穂花の手作りのお弁当食べたんだって?」


「ぶっ……!!?」


遥香の直球な質問におれは飲み込みかけていたパンを危うく、詰まらせそうになった。


「ケホッ、エホッ……!な、なんで知ってんだよ?!」


言いながら、慌てて近くにあったペットボトルのお茶を飲み干して落ち着かせる。


「あんたと穂花が2人揃って教室から出ていくのを何人か見てたみたいで、こっそり後をつけてみたら、そんな光景が見えたって言って教室で騒いでたわよ?」


「そ、そうなのか……」


そういや、穂花って転校してからずっと注目集めてたもんな。

そんな中、おれが手作り弁当食べてるなんて分かったらそりゃ騒ぐか……


「お弁当美味しかった?」


「あ、ああ、まぁな……」


さすがに手が止まらなかったとは言えない……

言ったらなんて言われることか……


「いいなー。穂花の手作りなんて。私も食べてみたい」


「い、言えば作ってくれるんじゃないか?というかお前と穂花って仲良かったんだ?」


転校してきてから話題にすらならないから、てっきり仲良くないもんだと思ってたが。


「まぁね。小学生の時、向こうが転校してきてからクラスずっと同じだったし、それにお互い当時は引っ込み思案だったからそれで仲良くなったというか。さすがに転校してきたのは驚いたけどね」


「なるほどな……」


おれが知らないだけで仲良かったんだな。

これなら穂花についての話もできそうだ。

まぁ穂花についての話って告白のことくらいしか思い浮かばないけど……

それに、これ言ったら最後だな……


「それより、あんた明日から気をつけなさいよ?」


「な、なんでだ?」


「穂花のファンに背中から刺されるかもよ?」


「急に怖いこと言うなよ……」


なんだが、背中がぞくっとしたわ……


「要は穂花の人気が凄まじいってことよ。そのうち、柳が面白半分で記事出すかもね。そしたらもう……ね?」


その先はどうなるかわかるだろ?と言った様子で遥香は目だけ合わせてきた。


「否定できないから怖い……」


とりあえず柳に連絡入れとくか……

おれは携帯を取り出してささっと文章を打つと柳にメールを送信した。

すると、ものの数秒で返事が返ってきた。

そこには。


「今から突撃取材しようと思ってたのに」


「まじで勘弁してくれ」


心の底からの叫びをおれは文章にして速攻で返信した。

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