まさかの事態

次の日の昼休み。

おれはいつも通り、中庭で作ってきた弁当を食べていた。もちろん、一人……の予定であったが、昨日に引き続き、ツレがいる。

但し、相手は穂花ではなく。


「相変わらず、クオリティ高いよね。将来、良い主夫になれそう」


「なら、主夫になるから養ってくれ」


家事だけすれば良いとか最高だな。

まさに、おれにぴったりの職業といえる。


「それ、ある意味プロポーズなんだけど」


柳は軽く笑いながら、パクパクと弁当を食べ進めていく。

ちなみに柳にはおれと遥香の家事情のことは話してある。

しかし、遥香は家では、ぐうたらとはさすがに言えなくて、居候のような身だから、家事を手伝うようにしているということにしてある。


今日は柳と昼休みを過ごすことになった。

というのも昨日の夜にメールが来て、話したいことがあるからと誘われたのだ。

なので今日も穂花から誘われたのがそれを断ってきた次第である。


それよりも話したいことってなんなんだ。

まさか告白とか……?

いや、まさかね……?

はは、ありえないって。

落ち着け、おれ。大体、相手は柳だぞ?

大方ゴシップネタの相談とかだろう。


おれは動揺しないように必死に自分に言い聞かせながら、弁当を食べ進めていった。


「ねぇ」


そしてお互い、弁当を食べ終えた頃に柳がゆっくりと口を開いた。


き、きた……

何故かドクンと心臓が波打つ。


「な、なんだ?」


至って平然とした様子で応える。が、心の中はもう大変なことになっている。非常警報鳴りっぱなしである。

ああ、もう必死に言い聞かせてたのに結局こうなるのかよ……!


「最近思ったんだけどさ……」


「あ、ああ……」


柳の一挙一動がやけにスローに見える。

ついに来るか……

おれは心の中で一種の覚悟を決めた。


「京君って何気にリア充だよね」


だが、予想していたのとは全く違った言葉が柳の口から放たれた。


「は……?」


予想外の言葉におれはたまらず、間抜けな声を出してしまった。

おれがリア充?

一体何を言ってるんだ、柳は。


「リア充ってそんなわけないだろ」


おれは呆れたように言った。


「いやいや、絶対リア充だって。門川さんと出かけてるのを見たって話も結構聞くしさ。しかも、転校生の倉田さんと転校初日から一緒にお昼食べてたって聞いたし、これは間違いなくリア充でしょ」


柳のその言葉におれは開きかけた口を閉じ、なんと言おうか少しためらった。


おれとしてはリア充だという感覚は一切なく、ただ仲良くしているつもりだった。

しかし、それがリア充に繋がるとは……

というかリア充って彼氏、彼女がいるやつらのことを呼ぶんじゃなかったか?

まさかのおれの認識違いだったのか?


「私としては何て声かけて倉田さんとお昼を一緒に過ごすことになったのか、すごく気になるところなんだけど。京君って何気にプレイボーイ?」


隣で柳がペンをメモ帳を構えて、やけに楽しそうに何か言っているが、おれとしてはリア充とは何かについて考えることに精一杯だった。


リア充って何だ?

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