好きになるということ
昼休みもそろそろ終わるという頃。
おれと穂花は特に話すこともなく、お互い無言でベンチに座っていた。
「……」
なんか話した方がいいかな……
でも会話のきっかけがない……
どうすればいいかとおれが頭を悩ませていると。
「ねぇ……」
穂花がゆっくりと口を開いた。
「ん、ど、どうした?」
どもる必要がないのに何故かどもってしまう。
「手紙に書いてあったこと、覚えてる……?」
「あ、当たり前だろ。忘れるわけないって……」
かなり強烈だったからな。もちろん、良い意味で。
「そっか、よかった……」
安心したようにほっと胸をなでおろす遥香。
あれ、この流れ、もしかして……
ちょ、ま、心の準備できないって……!
もう少し待って……!
おれが一人で勝手にあたふたしていると、その様子を見ていた穂花はくすっと笑い出した。
「大丈夫だって。今すぐに告白したりしないから」
「えっ、あ、そ、そうか……」
はぁ、よ、よかった……
いや、よくないのか……?
とにかく、今はよくわからないな……
「京介君が好きな気持ちは変わらないよ。でも告白するのは今じゃないかなって思ってる。それにあなた自身、私のことが好きかどうかわからないしね」
「……」
好きかどうかか……
確かに穂花をそういう、異性として見たことはない。今はまだ友達として好きってレベルだと思う。
「だから、高校を卒業するまでの間に必ず私のことを好きにさせてみせる。あなたから私に告白してくれるようにしてみせる」
まるで宣言とも言えるような言葉で穂花はおれに向かってそう言った。
とても力強い目で確かにそう言った。
その姿を見て、昔とは違うんだな。お互い、色んな意味で。と感じた。
「だから……これからよろしくね」
だが、次の瞬間、弾けんばかりの笑顔で穂花はそう言った。
おれはその笑顔を見て素直にかわいいと思った。こんな子と付き合えたら最高だろうとも思った。
だから、どんな結果になっても穂花の気持ちに応えられるよう、真剣に向き合うとこの時、心の中で誓った。
◆
その日の夜。
晩御飯を終え、おれはベットに腰掛けながら、部屋で小学校の卒業アルバムを眺めていた。
5年、6年と続けて穂花とは同じクラスだったので集合写真には必ず彼女も写っていた。
懐かしい気持ちと共に色んな記憶が蘇る。
6年の時、2人でプールに行った時もあった。
きっと穂花自身、ものすごく勇気が必要だったことだろう。好きな相手とプールに行くなんて。
今思い返せば、あの時の穂花の水着姿は相当かわいかった。
でも、当時の鈍感なおれは似合ってるの一言も言わず、最低最悪なことに中々更衣室から出てこない穂花に向かって遅い。と言ってしまった。
もしタイムマシンであの時に戻れるなら、戻ってあの時のおれ自身をぶん殴ってやりたいくらいだ。
そんなことを思って、薄ら笑いを浮かべていると集合写真に写るある人物に目が止まった。遥香だ。
遥香は必ずおれの隣にいて写真に写っていた。
この頃はまだ引っ込み思案だったもんな。
そういや、穂花とは仲が良いのだろうか。
夕食の席でもそういう話は出てこなかったな。そもそも穂花のことすら話題に上がらなかった。
そこで一つ疑問に思う。
なんでおれは2人が仲良しかなんて気になったのだろうか。
たまたまか、それとも別の違った意味を持っているのか。
違った意味ってなんだろう……?
思わず自問自答してみるが、結局その答えが出てくることはなかった。
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