変態だね
昼休み。
おれはいつも通り、中庭に向かう。
なのに、何故かドキドキと胸の鼓動が高まっている。理由はただ一つ。
「なんか一緒にお昼を食べるって新鮮だね。えへへ……」
「そ、そうだな……」
簡単なやりとりでさえ、どもってしまう。
だって可愛すぎるんだよ、おい。
そんな眩しい笑顔を向けられたら、神々しさのあまり、消えてしまいそうだわ。
今日は普段と違い、おれの横には穂花が。
昼休みに入り、いつも通り教室を出ようとした時、呼び止められ、一緒に昼ご飯を食べないかと誘われたのだ。
一緒に昼ご飯、しかも女子からのお誘い、さらにはそれが美少女とくれば、断る理由はどこにもない。
むしろ、嬉しすぎてその場で倒れそうになったくらいだった。
穂花はおれの隣でかわいらしい弁当箱に詰められているおかずを口に運んでいく。
その仕草一つ一つについつい目がいってしまう。
それに昔と変わらず、髪型はポニーテールだった。これまた似合っている。
おまけにスタイルも良くて、胸なんか直視できないくらいだった。
随分と立派に育って……って変態か、おれは。何考えてんだ。
「まさかここで京介君に会うとは思ってなかったからびっくりしたよ……」
少しばかりよからぬことを考えていた時、穂花のその言葉に箸をゆっくりと動かしていた手が止まった。
「それはおれもだよ……」
穂花と最後に会ったのは4年も前か……
二度と会うことはないと思っていたけど、どうやら運命は違っていたようだ。
おれが小学5年に上がったばかりの4月、穂花がおれのクラスに転校してきた。
最初は全然喋る事もなく、お互いなんの意識もせずに毎日を過ごしていた。
それがある日、ガラッと変わる出来事が起きた。
6月のある日、穂花が課外学習中に迷子になってしまったのである。
課外学習が終わり、学校へ戻ってきてからいないことに気づいたため、先生達は慌てて穂花を探しに行き、おれ達には先に帰るようにと指示があったが、おれは一人でこっそり探しに行った。
別に先生達より先に穂花を見つけて褒められたいとかそんなことは思っていなかった。
ただ、一人で寂しい想いをしている。
早く見つけてあげたい。
そう思っておれは1人、探しに出たのだ。
おれは家で1人で誰かを待つ寂しさを知っていたから。穂花はきっと今、それ以上に寂しいはずだから。
課外学習へは電車で隣の駅に行ったので、おそらく電車に乗れず、迷子になったのだとおれは思った。
そして急いで電車に乗り、隣の駅に着き、おれは辺りをがむしゃらに探しまくった。
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